short book
□a
1ページ/2ページ
裏切り者の1年半.
― aitai noha atasidake?.(kaku)
「お前には伝えなきゃと思って」
パウリーが悔しそうに寂しそうに、どこか謝る形でわたしに言った。部屋の中まで伝わる水の音、あたしの代わりに泣いてくれているのかもしれない。
「そっか」
これしか、言葉にならなかった。パウリーがあたしに質問攻め。お前はSか・・・てっきりM属性だと思ってたよ。
「ほ、ほんとにいいのか?!悔しくないのか?!」
「・・・うん。」
「お前・・・」
だって・・・何も、いえないじゃない。
あたしと、付き合ってたことももしかしたら任務の1つだったりとかするかもしれないし、それに、悔しくったって、伝える手段は何もない。
何も、ないんだから。
少なからずシュンとなったあたしにパウリーは何回も謝った、やっぱり伝えないほうがお前のためだったのか?とか、引き止められなくてごめん、とか・・・。
パウリーはなにも悪くないのに。
「ありがとうパウリー、でもねもういいの」
「・・・っ」
ぎゅって拳をにぎってるパウリーはとても、とてもつらそうだった。だから、いつもどおり笑った。
一人ぼっちになった部屋は広すぎて、切なくてあたしは涙もでなかった。あなたの出入り口はドアじゃなかった、あたしは窓を見つめいまにも、いまにもオレンジ色の笑顔が見えるのではないかと期待をする。
期待をするだけ、無駄なのに。
あいたい、あいたいのはあたしだけ?
「あいたいよ、カク」
そっとこぼした言葉は誰に拾われるわけもなくて、そのまま部屋の片隅に消えた。部屋の外はいつもと同じにぎやかなのに、あたしの周りの空間は、何もなかった。なんの音もしない。
出て行こう。
この部屋を、この国を。
ここにいるのはつらいから。