――――――・・・



リラが十一歳の時、お世話係として一人の男がついた。
“リラ様、よろしくお願いします…スイと申します。“
その男はそういうと、ふかぶかと頭を下げた。
“よろしく”
その頃のリラは疑うこともせず、彼に心を許した。
それからはとても楽しい日々で少しだけ自分が党首だということを忘れることができた。
だがある日、その思いは無残にも壊されることになる。
“リラ様。”
“なぁに?スイ”
“写真を撮らせて頂けないでしょうか?”
スイはたびたびそうゆうふうに写真をねだったり、身長や体重などを聞いてきたりした。
べつに何に使うのかとかは言わなかったのだが、リラは別に気にもしなかった。
すると数日後、大変なことが起こった。
“リラお坊ちゃん‼リラお坊ちゃん‼”
“なんだよぅベリシエ…”
そう叫びながら部屋に入ってきたのはエリックの付き人ベリシエで、寝起きのリラが不機嫌そうに起きると、いきなり封筒が突き付けられた。
“なに…?”
“開けてみてください…”
そう言われたのでしぶしぶ封筒を開けると、中にはぎっしりと写真が詰まっていた。
“俺の写真…?”
その写真は、前にスイが撮った写真だったのだ。
“そうです。…裏ルートで手に入れました。”
“それで?”
きょとんと聞き返すとベリシエは息を荒くしながら言った
“それで、じゃないですよ‼それが裏ルートで取引されてたんですよ‼‼”
取引…?
状況が解らなくなって固まる…。
この写真はスイしか持っていない筈なのだ。それが取引されていたってことは
…犯人は
一人しかいない。
“スイ…?”
“スイってあの…‼?…探してとっ捕まえてやります…”
その後、スイは二度と姿を現さなくなった。
それから嫌がらせの電話や手紙が続き…そしてリラの中には強い憎しみと悲しみだけが残ったのであった。
(こんなことになのなら…俺は一生、人なんて信じない。)
リラはそう、心にきめたのだった。

――――――――

「―ラさん…――リラさん!」
「え…」
「どうしたんですか?顔色が悪いですよ…?」
「あ…いや、なんでもねぇ…」
(やばい…トリップしていたのか…)
「リラさん…もうお休みになられたほうが…」
「いい。ぼーっとしていただけだから。」
「そうですか…?」
レイはしぶしぶ引き下がったが、納得ができていないようで、リラのことをまだじろじろと見ている。
「大丈夫だって…」
「でも…」
レイは一度押し黙ってから口を開いた
「泣きそうな顔をしています」
「は…?」
そう言ってレイは、リラの頬に手を添えた。
――パンッ
レイの手がはじかれる。
「………」
「触るな、俺はまだお前に心を許してない」
「…そうですね。」
レイが微笑む。
ゾクリとするような綺麗な笑顔だった。
「お前、気味が悪い」
するりと自然に出てきた言葉だった。
だが、レイはそんな言葉にも顔を崩さず、
「よく言われます」
とだけ答えると、
「あ、そろそろお風呂の準備しますね」
そう言って、そそくさと部屋から出て行った。
「…なんなんだよ…あいつ…っ」
自分の中にあるイライラをうまく解放できず、リラは傍にある、ソファーに拳を叩きつけた。

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