―――――――――――――――――――――――――――…

レイは本当にものの10分で食事を運んできた。
しかもとてつもないほどの量だ。
「おい、おまえ」
「お前じゃなくてレイです…で、なんですか?」
「お前はおまえでいいんだよ…じゃなくて、お前は俺を殺す気か。」
目の前に並んでいるのはテーブルいっぱいに広がった韓国料理…っぽいもの
うまそうなのは認めるが、どう見ても量が…多すぎる。
 もともと小食な方のリラには見るだけでもつらいものだった。
「殺そうなんて微塵も思ってませんよ、…殺すとしたらもっと効率のよい方法でします」
「おい、今とてつもないことをさらっと言いやがったなお前、てかそう言う意味じゃなくて、量が多すぎねぇかってことを言ってんだよ‼」
「え、そうですか?このくらい食べないと縮みますよリラさん。いまリラさんはどんどん栄養を取ってどんどん大きくならないといけない時期なんですよ‼健康男児が弱音を吐いちゃいけません‼」
「いやいやいや、これはどんな健康男児にも無理だろ、5人分くらいあるぞこれ‼‼‼‼」
これが普通だとでも言うレイに必死で反論する。
「リラさんはわがままですねぇ…わかりました。いいでしょう。
「なら―――…」
「でも、この半分は食べましょうね?」
 やれやれとでも言うかのようにレイは首を振ると、机にある料理の2分の1をさげる。
「…もうちょっと減らせねぇか?」
「無理です。これだけは食べてください」
 ピシャリと言い捨て、ニッコリと微笑むレイは今のリラには悪魔にしか見えない。
しぶしぶ料理に手を出す。
「どうですか?」
「…うまい。」
 本当にうまかった。
 顔には出さないがこれほどうまい料理は初めて食べたような気がする。
 はしが進む。
「………」
「何?」
 こちらをじーっと見てくるレイが気になって声をかける。
「えっと…僕も一緒に食べてもいいですか?」
 レイは遠慮気味にそう言った。
「…別に…いいけど」
 一人で食事をとるのはなんだか居心地が悪かったのでそう答えると、レイは
「ありがとうございます」
とだけ答えてリラの正面に座った。
「………」
「………」
 カチャカチャという音だけが聞こえる。
 三人とも無言で食べ進める。
 三人――…って三人‼?
―――――――なんかいるんですけど‼
 そう、明らかにレイの肩のところになにか居るのだ。
 最初は幻覚かと思い無視していたのだが、どうも気になってしまう。
「なぁ、」
「?…なんですか?」
 レイが動いたのと同時にその肩に乗っている物体も動いた。
 ――う、動いたぁっ‼‼‼?????
 心の中ではもうめいっぱいパニックに陥っているのだが表は平静を装う。
「…それ、何?」
 指をさしながらそう言うと頭の中に声が響いてきた
『それって言うなこの脳無しが』
「‼‼‼‼‼????」
「そんなこと言っちゃダメですよ…ネロ」
「ネロ?」
 肩に乗っていた物体が正体を現す。
 
――黒猫?

 肩に乗っているのはグリーンアイの綺麗な毛並みをした猫だった。
「何こいつ…てか、しゃ、しゃべった‼?」
「僕の家族です。」
『しゃべってない、テレパシーってやつ知らないのか?脳無しはこれだから困る…』
ぶちっとなにかが切れる音がした
「の、脳無し…?…チビが何言ってんだよばーーーーーーか‼」
 また、なにかの切れる音がする。
『チ、チビ?ばか?主、俺こいつ殺していいですか?』
「ダメですよ。」
 レイは笑顔のままそう言う。
「殺す?やってみろよ、まぁ、チビには何もできねぇけどな」
 ははっと笑ってやる。
 猫だからよくわからないのだが、あっちも相当ムカついているらしく、今にも飛びかかってきそうなほどの殺気を放っている。
「ん?できねぇのか?」
『そこまで言うならやってやる…』
「はいはいはい、ストーップ」
 今にも乱闘しそうなふたりの間には言ったのはレイだ。
「けんかはよくないですよ」
 こんなことになってもまだ笑顔は崩れない。
『主…』
「………」
 二人ともむぅっと膨れるがそのとうりなので何も言えない。
「喧嘩は保留と言うことで、自己紹介と行きましょう」
 そう言ってレイはネロを机の上に乗せてリラの方を向かせる。
「この子はネロと言います、無口でたまに口が悪いのは傷ですが…僕の家族です。」
 次はリラを座らせ、言う。
「この方はリラ――…」
「そのくらいオレが言う」
「はい、そうですね」
「オレは…リラ・マジェスタこの家の次期党首」
 ぶっちょう面で言うと、ネロの方を向く。
 ネロもこちらを見ていた。
目が合う。
「なんだよ」
『……』
 何も言わないと思ったらネロはいきなりクルンと宙返りをした。
 …と思えば、床に降りたのは黒猫ではなく、14…そのくらいだろうか?綺麗な黒髪の少年がそこに立っていた。
「は?何こいつ‼?」
「さっき会ったばっかりなのにもう忘れたのか?」
 皮肉にそう言ってその少年はこちらをにらんだ。
「ネロ…?」
「そうだよ」
 その声は直接頭の中で響いてくるのではなく、普通に話しているものだった。
 ――てか、こいつも何気に美形だし…
 黒く、ストレートで猫毛な髪は肩に着くかつかないかぐらいの長さで、少しつり目な瞳は猫の目のようにランランと光っていて。
 どこの民族の衣装だろうか?とても珍しい服を身にまとっている。そして、背丈は…
「オレより…低い。」
「少しだろ?」
 リラより少し低いほどのものだった。
「低いのは低いだろ?まぁ、俺成長期だから、すぐに差は開くだろうけどな」
 ニヤリと笑うと、ネロは
「俺も成長期だ…」
と、呟いた。
 するとリラはここぞとばかりに言葉をまくしたてる。
「へぇ〜同じ成長期なのにこんなにも差があるとはねぇ〜なんでだろうなぁ〜」
 にやにやと笑いながら言われたくないであろう言葉を次々と並べた。
 そのリラの攻撃は続く。
「…あ、もしかして人間と猫っつうのはやっぱり成長の速度に違いがあるのか?それだとしたらしかたねえんだけど…?」
「……」
「リラさん…もうやめといた方が…」
 レイの言葉など気にも留めず。リラはにたあっと笑い、次の言葉を話す。
「ん?何も言えねえのか?…と、言うことはお前がちびってことだよなあ!あーごめんなあ…いろいろと気づつけるようなことばっか言ってー…ごめんな?ネ・ロ・君!」
その時、なにかが切れる音がした。
「…おい」
 ぼそっとネロが呟く。
「ん?」
 そう返事を返したのもつかの間、気がつけば体が壁に向かって飛んでいた。
「な…っ‼?」
 とっさに受け身をしたため体ごと壁にぶち当たるのは阻止できたが、受け身をとった腕がとてつもないほどの痛みに襲われる。
「っ…何しやがんだよ…手前‼」
「何って…蹴った。」
 腕を抑えながら体を起こす。
リラをけった張本人は、何事もなかったかのように平然と答える。
「腕一本で済んでよかったな。…ふぅん…ただの金持ちと思ってたけど、違うんだな」
「ただの金持ってなんだよ」
「金があって当然だとか思ってる馬鹿な金持ちだよ、あ、そうだとしたらお前もその馬鹿な金持ちに入るな。」
 ネロはそう言うと、クスクスと笑う。
「喧嘩売ってんのか?あぁ?」
「お前みたいな馬鹿とけんかなんて考えられないね、第一、…お前が俺にかなうわけねーだろ」
「何だと――――――」
「はーい…ストップ‼‼‼‼」
「「何で止める‼‼‼‼‼‼‼」」
「リラさん、このままでは腕一本では済まなくなります。後でこの話が終わったらボクのところに来てください。」
「……」
「ネロ、馬鹿なことはしないでください。ボクの職場なんですから……一応リラさんはここの次期党首なんですよ?」
「…はい。」
「おい、一応って何だ一応って‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
「はい、というわけで仲直りの握手です」
「「こんなやつとするか‼‼‼‼‼‼‼‼‼」」
「握手です。」
 ニッコリと笑うその姿はとても美しいのだが、背中からなにか黒くうごめく物が…見えた。
「「すみませんでした」」
 …と、まあ色々あってどうにか手を重ねる。
「さっきはごめんな‼‼‼‼‼‼‼ネロ君‼‼‼‼」
「ああ、俺も悪かったよこん…の腹黒野郎‼‼‼」
 ニコニコしながら握手…らしきものをする。
 つながれた手からはミシミシというような音がするような気がするが…まあ、置いておこう。
「仲直りできてよかったです」
そう言ってにこっと笑うのは黒いものを背負
ってはいなかった。
((これが仲直りって言うわけがねえっ))
 そう思ったのもつかの間、レイが起こっていないのを確認してか、ネロは握手のしていた手を離した。
「……」
 手の甲にはくっきりと爪の痕が残っていた。
 ぼそっと呟く。
「クソ野良…」
 ネロはぴくっと耳を動かし。
「脳無し」
 それにすかさず反応するレイ。
「何か言いましたか?」
「「気のせいです‼」」
「そうですか。ならよかったですね。」
 ふぅ…と同時に息を吐き、リラとネロの視線が重なり、二人ともぷいっと視線を離した
 そのまま沈黙になり、なにか話題を探そうとしていると、ネロが突然口を開いた。
「そう言えば…主、なんでオレの事呼んだんですか?」
「そんなの簡単ですよ、リラさんのお世話を手伝ってもらおうかと」
「「は?」」

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ