黒子のバスケ
□あなたが好きだから
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黒子テツヤは影が薄い。
どういう事かと言われてもそのままの意味。
とにかく影が薄いんです。
「おい、黒子どこだ?」
「ここにいます」
「うお!?いるなら早く言えよ!!」
同じクラスの火神君の叫び声が聞こえるのは日常茶飯事。
授業中寝ていても先生に起こられるのは火神君だけ。
黒子君は何も言われていない。
隣の席の私は思わず苦笑してしまった。
でも、どうして誰も気付かないのだろうか。
例え影が薄くても彼はそこに居るのに。
「 未来 」
「あ、火神君。どうしたの?」
「黒子知らねぇか?」
「黒子君?」
「あぁ」
「そこにいるよ、ほら」
私は一点を指差した。
そこには教室の窓から外をぼーっと見ている彼がいる。
同じようにそこを見た火神君は驚きを隠せずにいた。
あの黒子を見つけるなんてすげぇ、そんな顔をしているのが手にとるように分かる。
「サンキュ」
それだけ言うと彼は黒子君の所に向かって行った。
私は二人が居る所へと視線を向けた。
部活の話しだろう、多分。
ふとこっちを向いた黒子君と目が合う。
私は微笑んで手を振り、自分の席へ着いた。
そんな日の放課後。
委員会で帰りの遅くなった私は人より遅い帰路についていた。
一人とぼとぼ歩いていると、遠くの人混みの中に見知った人物を見つけたので私は走って駆けつけた。
「黒子君!」
「 未来さん?」
見つけたのは黒子君。
一瞬驚いた表情を見せた彼だったが「今帰りですか?」と問う彼の言葉に頷き、肩を並べて歩き始める。
「委員会だったの」
「そうだったんですか」
「黒子君部活は?」
「今日はミーティングだけみたいだったので」
どうやらお昼の伝言はその内容だったみたいだ。
体育館が使用不可の為に自主練も禁止、ミーティングのみでそのまま帰宅になったみたいだ。
そっかー、と呟いた私の言葉を最後に二人の間には沈黙が流れた。
誰もいない道路に二つの影が並んで写る。
不思議とその沈黙は苦しくない。
寧ろ心地よく感じるのも事実。
「あの……」
そんな沈黙を破ったのは黒子君だった。
私は彼に顔を向け、首を傾げた。
「 未来さんはどうして分かるんですか 」
「………?」
「僕は影が薄い。でもそんな僕を見つけてくれるのはあなただけです。学校でも、さっきでも」
私は黒子君が言いたい言葉の意味を理解した。
足を止めた私と同じように、彼も並んで足を止める。
沈みゆく夕日が二人を眩しく照らした。
「それはね」
あなたが好きだから
(自然と目がいくの)(好きだから)(あなたを目で追ってるの)(好きだから)(どこにいるかすぐに分かっちゃう)
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