短編

□悪夢は僕に食らい付く
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浅い眠りをする時はよく仮眠室で眠るけれど、非番の時は征陸の部屋で眠る時が多かった。監視官として、刑事である彼のところへ一晩中勉強していると周囲は思っているが、そんなことはしていない。

「……ほら、寝れる時は寝たらどうだ」

体はそんなに強くない自分はよく、体調を崩した。そのため、口酸っぱく宜野座や征陸が言うのだ。寝れる時は寝ろ、と。今日も、そんなところだ。

「昼寝、しちまったらお前が暇になるじゃねぇか」
「…俺のことはいいから、…ほら」

そう言って、本を読み始めてしまった。仕方無く結城は布団に潜り、目を閉じる。折角、二人でいるのに恋人を差し置いて読書かよ、とは思いつつ、ゆっくりと忍び寄る眠気には勝てなかった。









たまに、怖くなる時がある。寝るのは好きだ。けれど、眠るのが怖くなる時があった。恐ろしくて、自分ではどうしようもなくて、ただただ忍び寄る眠気に恐怖を抱いて、体を震わせるのだ。
目が覚めた頃には時計の針が五を指しており、三時間程眠っていたらしい。食堂へ二人で向かい、夕飯を済まして部屋へまた戻った。今夜は、駄目だ。

「今日は、もう…帰んわ」

彼の部屋の前で立ち止まり、そう言った。今夜は、眠れそうにない。きっと征陸に迷惑が掛かる、こんな夜は珍しくないのだがこのことを彼は知らない。知ってほしく、ない。
何を言っているんだ、と言わんばかりに腕を引かれて部屋に入れられてしまう。大丈夫、今夜はきっと眠れる。なんて、自分に言い聞かせるしかなかった。
シャワーを浴び、征陸の使い古しのワイシャツを着てベッドに入る。彼のワイシャツは結城にとって、大きかった。ズボンは裾を折って履いたため、裾を引き摺ることはない。

「おやすみ」
「……おや、すみ」

いつもの、寝る前のキスを頬に互いにして布団に潜ったけれど恐怖は拭えなかった。大丈夫、眠れる。ぎゅ、と目を瞑ってしまえば呆気なく闇が、広がった。




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