03/23の日記

17:08
3月21日のもくりの小話
---------------
グエルとベルドランが買い物行くだけのゲームブックの話題から、話してる内に小話3つ出来ました。
付き合って無い。時間軸☆3。モブの店員出ます。



買い物へ行こう
 

○アーケード入口・露天商○
 

「これは何だ?」

グエルと生活を始めて、囚われていたと言うだけあって、一般的な街で暮らす知識が足りない事はすぐにわかった。聞いては来ないが戸惑う様子が見られたからだ。無気力に惰性で生きて来たせいで、分からないことを意欲的に知ろうという姿勢が……と言うか、聞くという概念が無かった。
だからこの、幼児の何故何期の様なセリフが日常的に聴こえるのは、成長と言っていい。

「どれだ?」

グエルが見ているのは、良くある硝子の飾りが回るタイプのオルゴール。今は音が鳴っていないそれを、軽く台座に付いたゼンマイを回してやる。音楽と共に、硝子の白鳥が回り始め、グエルの目が見開かれる。赤い目に硝子の白鳥の輝きが映って、宝石の様だ。

「オルゴール、初めてか?」
「…ああ。」

見入っていて、反応が少し遅い。

「下の台にネジ巻きで音が鳴る物が入ってて、その動力のついでで上のガラス細工が回る仕組みなんだ。」
「綺麗だ。」

音が鳴り止んでも、少し名残惜しそうだから「買うか?」と聞いたが、グエルは「壊しそうだ」と首を横に振った。
……今度、買ってやろう。

「よし、寄り道はこの辺にして、次は肉屋に行くぞ。」
「ああ、わかった」

連れ立って、商店街の先に進む。
──急がない非番の日の買い出しにグエルを連れ出して、生活のリハビリをするのは楽しい。傭兵団の奴らには「週末買い出しデートする同棲し始めのカップルか」とか言われるが、買い物もした事ないやつをいきなり放り出すような無責任な真似出来ないからな。

……ついでに肉屋でコロッケを食うと美味い事を教えるのも忘れずに。



 
 
 
○本屋○


「お!グエル、ちょっとここ寄っていいか?」
「どうした?」

俺が立ち止まった先は良くある街の書店だ。レシピブックと新しい家計簿と娘のスケッチブックを買って帰ろうと思っただけなんだが、見回したグエルの表情は暗い……というか、警戒してる?

「ここは、何かの研究室か資料室か?」
「ぶはっ!いや悪いそうか……紙が沢山ある所それしか知らないのか。」

入口付近の子供向けの動物図鑑も、乗り物図鑑も、グエルには未知の生物資料や、謎の機械の資料だよな。

「ここは本屋だ。この資料を売ってるんだ。だからここ自体が研究所の類と繋がってるわけじゃない。俺は作った事が無い料理の資料を買いに来たんだよ。」
「……そうなのか。」

もしかしたらお前の懐かしい味とか有るかも知れないだろ、とは流石に気恥ずかしくて店のド真ん中では言えない。






 
○肉屋○


店の前に立つと、店主がすぐに出てくる。

「お、いつも有難うな。今日は何だ?」

店先に大男が二人も居て影になってりゃ様子見に来るよな。でも常連の俺だと気づいてすぐに店主は営業の顔になる。ここに来て俺が何も買わなかったことが無いからだ。

「今日はシチュー用の鶏肉と……何か良いのあるかい?」

隣のグエルはショーケースに並んだ生肉を見ている。でかい赤身の牛肉の塊をまじまじと見て、調理前のそれを美味そうと思っているのが分かる。研究施設で何肉か知らない生肉を与えられる事が珍しく無かったらしいグエルにとって、美味い方の肉の見た目なのだろう。

「……コイツが見てるソレ、1キロ頼むわ。」

俺が笑いを堪えながら言うと、店主も面白そうに笑う。

「兄ちゃん見る目あるな。この部位は美味いぞ!今日のオススメだ。ちょっとまけといてやるよ。」
「良いのか?」
「そんな目で見つめられたらかなわねえよ!」

キョトンとしたグエルを見て、店主と笑い合う。「包むからこれ食って待ってな」と言われ、コロッケは頼む前に出てきた。
熱々のコロッケを一口で半分頬張った時は心配したが、グエルは平気らしく、しかしガッツリ頬張ったせいで喋れずに齧った断面とこちらの顔を交互に見て、顔全部で「美味い」と表してくる。
店主が笑ってサムズアップするので、グエルもたどたどしくサムズアップで応えた。

作戦用のハンドサインかアリーチェの手遊びくらいしか知らないグエルが、年相応のはずのジェスチャーをぎこちなくするのが可笑しくて、俺のコロッケは中々減らない。



□終□
カテゴリ: 小話の類い



☆コメント☆
[はやもと] 03-25 05:55 削除
ウウーッどこで読んでもうめぇ…!高速で小話が出来ていく様を体感して驚愕でございました…。

[黒点コロナ] 03-25 10:05 削除
いらっしゃいませー、けそさん!
ツイッタには画像で小分けの姿で出しましたが、私にはやはり一発でだーっと字が出る方が好みなので、ここにも置いちゃいました。
何時でもどこでも美味しいグエベル。良いですよね。

前へ|次へ

コメントを書く
日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ