古都の夢

□痛いの痛いの飛んでいけ!
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「う゛〜ん……」
「どうしたよ、そんな難しい顔して」
頭に痛みを覚えてソファーに横になってると、キッチンからコーヒーを持って来た曼成が顔を覗いてきた。






曼成は同じ会社の同期。曼成の方は中途採用だったから年上なんだけど、気さくで愛嬌があるその性格と、それに対する意外な優秀さで上にも下にも人気がある。
勿論、(一応)彼女の私もその一人。






未だに営業のホープって言われてて、女の子達にも人気な曼成と付き合ってて、況してや同棲してるなんて夢のよう。こんな会計課の平で、冴えない私の何処が良かったんだろ。
「あ、曼成。ちょっと頭痛くて……」
「昨日パソコン弄りすぎたんじゃねえの? 確か残業してたんだろ?」
「うん……そうかも。あー、折角休日出勤しないように頑張ったのについてないな〜……」
「へえ……」
覗き込んできた曼成の顔が厭らしい笑みを浮かべる。何かやな予感。あ、そんなに顔近づけないでよ!







「それってさ……俺とイチャつきたいから頑張ってた、とか?」
どアップで囁かれたせいで思わず顔から火が出るんじゃないかって位紅潮する。
無駄に良い顔なんだから近づかないでってば! もう……絶対曼成もこうなるの分かっててやってるし!
「なっ……ち、違うわよ!? 決算終わった後だから久々にのんびりしたいなってだけだって!!」
「んなの嘘だな」
「何で分かるのよ?」
「俺の優秀な勘!」
「勘!?」
出た、曼成お得意の勘。
何故か彼は勘が冴えてて、今日はお得意さんの機嫌が良いだの、誰かが体調崩すだのと良く言い当てる。胡散臭いけど、これが本当に当たるから侮れない。初め私はこの勘のせいか曼成に良い印象をあんまり抱いていなかったりする。内緒だけど。




「はあ〜もう、更に頭痛くさせないでよ……鎮痛剤、鎮痛剤……」
曼成を引き剥がし、薬箱を引っ張り出す。だけど、お目当ての物が見つからない。あれ? 使い切っちゃったんだっけ?
「うっそ……うわぁ〜……とことんついてない……」
「どうした?」
「鎮痛剤切らしちゃったみたい……でも買ってくるのも億劫だしなぁ〜……どうしよう……」
曼成が買ってきてくれないかなと頭の片隅で期待していたのだが、彼から出てきたのは意外な言葉。
「あ! そういやこの前、頭痛が治る方法っての、何かで見たんだよな」
「頭痛が治る方法? そんなのあるの?」
薬より早く治るなら是非ともそうして貰いたいけれど、何故か曼成がニヤニヤと此方を見てくるのがやたら気になる。
しかし今の私には何の事か見当も付かない。
「ああ、試してみるか?」
「そんなのあるならやりたい! 薬買ってくるのもちょっと大変だし……何か道具が要るの?」
「いんや、道具はこの身一つで十分だな、確か」
「へぇ……何だろ? マッサージとか?」
「まぁ、ちょっとしたストレッチだ」
「そうなのっ……わっ!?」
突然曼成が私を抱き上げた。いきなりの事に何をすれば良いか分からない私は只々曼成にしがみつく。
「ま、曼成!?」
「こんな狭いソファーじゃ上手く体伸ばせないだろ。ベッドまで運んでやるよ」
「わ、私一人で歩けるよ!」
「まーまー、いいからいいから」
何が何だか分からず連れてこられたベッドに寝かされると、何故か私の上に曼成が覆い被さる。
あれ? 何かおかしな方向に……。
「ま、曼成?」
「んー?」
「何で……服脱がそうとしてんの?」
すると待ってましたと言わんばかりにニィと笑みを深めて良い放った。
「どういう方法か……教えてやろうか?」
「う、うん……」
曼成の顔が笑顔を携えた儘、私の首に顔を埋める。左の耳に吐息が掛かって擽ったいやら恥ずかしいやら、反らしてしまいたい衝動に駆られたが、何時の間にか曼成に動きを封じられてるせいで叶わない。




奴はやたらと色っぽい声色で囁いた。













「頭痛ってな………………スると治るらしいぜ?」
「は?」
「んじゃま、そういう訳だから」
ニンマリと笑い服を脱がす手を進める曼成に私は目が点。
ちょ、ちょっと、ちょっと、ちょっと!!





「な、何よそれ!? そんなの聞いたこと……」
「セックスすると、セロトニンってホルモンが出るんだと。それに鎮痛作用があって頭痛が収まるって話だ。信じらんねーってんじゃ実地で試そう。そうしよう」
「勝手に自己完結するなー!!」
思わず突っ込むけど、曼成が止まる気配が無い。
だ、騙された……あんな事を曼成が言った時点で怪しめば良かった……!





「ま、曼成っ……ま、ぁっ……!」
「……頭痛何か忘れちまう位、ヨくしてやるよ」
そう囁くと曼成は再度首元に顔を埋めてくる。
もうこうなったら負けも同然。
私は諦めて集中することにした。
もう……治らなかったら絶対許さないんだから!

























「……で、どうよ頭痛は?」
「……今度腰が痛い。全身ダルい」








〜End〜

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