宝物(小説)

□所有特権
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端から見れば酔っ払いなのだが、面白そうなのでそのまま放置してみた。

すると、やはり先程と同じ様子で、胸元を指先で拭い音を立てて舐めしゃぶる。

けれど、先程と違い、途中で私の方に指が差し出された。

「この、おさけ、それより、おいしいですよ?」

「これよりか?・・・それなら、味見してみよう」

克哉の人指し指を、自分の咥内に入れ、舌先で弄ぶ。

琥珀色の液体に混じり、克哉の唾液の味もする。

「ね?」

小首を傾げて同意を求める克哉は、さて酔っているのか、どうなのか。

「これだけじゃ、分からないな」

腕を掴み直して、克哉の鎖骨に舌を這わす。

窪みを突けばフルッと身体を震えたが、何故か違うと呟かれた。

「どうした?」

「そこには、ないです・・・」

「なら、どこに?」

空いた片手が自分の頬に添えられ、互いの顔が近付いて行く。

「ここに」

赤い舌で唇を舐められ、ああ、そうかと納得した。

「確かに、美味そうだ」

酔っていても、いなくても、この恋人の可愛い所は、自分だけのモノだ。
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