贈り物

□夢現牢屋
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"愛"を知らない俺は、どんなことがあっても、心が満たされることは無い………そう、思っていた。


「夢現牢屋」


太陽が顔を出す頃、俺たちは眠り、
月が顔を出す頃、俺たちの仕事が始まる。

――ここはとある遊郭。俺……上條弘樹は、この遊郭の太夫だ。

(いつもと、変わらない風景だな………)

窓の下に見える地上は、いつもここから見える夜の遊郭、いつも通りだった。
酔った男、女を買う男。
欲望が、渦巻く街。

「はぁ……」
「弘樹?どうしたんだ?溜息なんてついて…」
「あ…いえ、申し訳御座いません」

お許しを、と1つ目の前の客に頭を下げる。

このお方は津森様。小さい頃、両親を病気で亡くした俺に手を差し伸べ、ここへ連れてきた人。

「具合が悪いのなら、休んだ方がいいぞ」
「いえ、本当に大丈夫です」

にこりと仕事用の笑みを浮かべ、そう答えると

「そう……それなら」
「っひぁっ!」

見事に鮮やかな手さばきで、とさっ、と畳の上へ押し倒される。

「つ…もり、さま?」
「したい。ダメ?」
「いえ……」

着物の合わせから怪しい動きをする津森の手が侵入してくる。
そしてそれが俺の性感帯を捕らえた。

「あぁっつ………」
「いい声だね、弘樹」

首筋を舌先でスーッと舐められ、ビクリと身体が反応する。

(求め…られてる)

相手が、俺を求めてる。
こんなに、穢れた、身体を。

(それでも貴方は)

俺を満たすことはできない。
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