宝物(小説)

□所有特権
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この表情も、声も、指も、唇も、全て自分のモノなら

どんなに、喜ばしい事だろう?



所有特権
(見ていて飽きない恋人)



克哉は、酒に対してザルだ。

大学時代に鍛えられたと本人が言う程、アルコールに耐性がある。
「んっ、く。ん、っ」

「・・・」

「はぁ・・・。おいしい・・・」
ペロッと唇に残る残滓を舐め取り、ソファーに座る克哉が、上機嫌で新たな琥珀色をグラスに注ぐ。

『1本位、余裕で空けれますよ』

呑む前の宣言通り、高級酒が克哉の胃に流れ落ちる。

こんな風に呑むと、味わってない様に思われるが、最初の一杯を呑む時、克哉は必ず舌なめずりをしていた。

「そんなに気に入るなら、もう1本購入しておけば良かったな」

「いいえ〜。十分ですよ〜。オレなんかに、こんなお酒2本なんて、勿体ないくらいです〜」

語尾が間延びしているが、克哉曰く酔ってはいないらしい。

だから、今私が何かしても、全て覚えている。

(まぁ、覚えてくれてる方が、何かといじり甲斐はあるが・・・)
「ん・・・っ」

両手でグラスを持ち、色っぽい声で液体を喉に流し、無防備な首筋が嚥下を繰り返す。

(我を忘れる位と言うのも、気にはなるな・・・。だが、ザルなら夢のまた夢か)

自分も琥珀色の液体で唇を濡らすと、あ〜と間抜けな声が隣から上がる。

「ビチョビチョ・・・」

「大丈夫か?」

「はい。だいじょぶです。でも、もったいないな」

顎から滴り落ちる液体が、首から胸元まで滑り落ち、克哉の指先さえ濡らしていた。

その指先を何を思ったか口に含み、吸ったり舐めたりをし始める。
味が無くなれば、濡れた皮膚から琥珀色を拭い、また口に含む。

「・・・克哉。酔っているのか?」

「ふぇ?いいえ〜?よってませんよ〜」

しかし、首筋の液体が無くなったと、今度はシャツのボタンを外した。
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