オハナシニャ
□更なる名物料理を求めて〜リナーガ漫遊記〜
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「うーん・・・ここの料理いまいちね」
今は昼の時間帯。
一際賑わいをみせる店内で栗毛色の長い髪の少女と真っ黒い長髪の女性がテーブルいっぱいに置かれた料理を口に運びながら、料理に対しての愚痴を並べていた。
「第一、ジャジャの実を隠し味に使うなんて外道よっ。ここはやっぱりメインに使用して味を引き立たせた方がよっぽど・・・」
「そうねぇ。
これじゃいくら金貨三枚食べ放題だからとは言え・・・ちょっと高すぎかしらねー」
「うん。ソレ同感。
銀貨五枚が良いところね」
栗毛色の髪の少女―――――リナはひょいひょいと手に持っているフォークを動かしながら話す。
黒髪の女性―――ナーガもうんうん、と頷いていた。
「なんかお金出すの勿体ないわね・・・」
「食い逃げしちゃいましょうよ?」
「・・・あんたね・・・」
―――あたし(リナ)は呆れてナーガを見る。
こんなピークが過ぎて入口ががら空きな店からどーやって逃げるってのよ・・・
「・・・そうだわ。」
「何よ、リナってばー」
「奴に払わせよう。それが良いわっ!」
「・・・奴?」
ナーガは不審な目であたしを見ていた。
ふっ、解ってないようね、ナーガってば。奴ったら一人しかいないじゃない。
「ほら、あいつよ。
何時もニコ目で何考えてるかわからない、極悪非道なおかっぱ魔族!」
「・・・いたかしら、そんなの」
・・・ま、ナーガの性格上、あいつを忘れてるってのは解ってたけど・・・実際こうやって彼女の口から聞くのは・・・なんつーか、辛いものがある。
・・・なんであんな濃い奴を忘れられんのかしら・・・あ、初めから覚える気が無いからか。
「今から呼ぶから待ってなさい!ゼロス!
別名【財布代わりのパシリ魔族】!!」
「...ああ!それなら私にも解るわよっ!」
あ、やっぱしその二つ名では覚えられてたか。ゼロス、哀れね...。
「お呼びですかぁ♪リっっナさんvV」
むぎゅっ
いつもの如く、現れた途端、ゼロスはあたしに抱き着いた。
「やっと来たわねっ。遅いじゃないのよっ」
...いつも思うけど、ゼロスが現れて抱き着く、ってのが慣れた、あたしが怖い。週間付いて来たって感じ...?
とにもかくにも、悲しいことには変わりは無いわけで。
「リナさんてば今日も柔らかいです...♪これが楽しみで生きてるんですよね〜☆」
☆マークとかウザッ!!
でも、あたしに抱き着いてほお擦りするのが楽しみって...
こいつ、本当に魔族なのか、解らなくなるじゃない!!
なもんだからあたし、危機感なさすぎ!
...一般的に考えれば、お金払わすために魔族(しかも一応高位魔族だし)を呼び出すなんて命知らずだ、って思われるかもしんないし。
...いや、それより。
呼び出した時点で既に死ぬのを覚悟してるって思われるかも...(冷や汗)
「それで、用件は?」
「支払い」
あたしが何のためらいもなくぴしゃりと言い放つと、無論テーブルの隅でいぢけだすゼロス。
...誰が見ても、魔族には見えないわね...
「リナさぁぁぁん...
あんまりですよぉ。僕に支払いをさせる為だけに呼び出すなんてぇ...」
「い、いやだから。」
「ねぇ〜リナぁ?ソイツ本当に魔族なの?そんなヘニャヘニャしたゴキブリみたいな生ゴミっぽい(←酷)魔族なんか見たこと無いわよ...?」
ナーガ姉さん、鋭い。
そして、ナイスなまでの不躾さっ!敬服します、別な意味で!!
「リナさん?この人(?)めちゃくちゃ失礼なんですけど...?」
「良いじゃない。大体当たってるし。」
「当たってないですっ!」
必死で弁解を試みるゼロス君。
でも、そんなのは全く通用しないナーガ。ふっ、と勝ち誇ったように笑うと。
「見苦しい言い訳ねぇっ!ただのゴキブリの分際でっ!」
見事、ゼロス君イコール魔族という肩書を書き直してくれやがりました。
「...」
「(うわっ、ゼロスからどす黒いオーラが...!?)ゼ、ゼロスっ!ほ、ほら!あたしの分だけ奢ってくれりゃあ良いから!」
「...ふふふ...
当たり前でしょう...?
愛しいリナさんならともかく何故こんな赤の他人にまで奢る必要があるのです?」
「...あ、あら。お腹が....」
「(おそるべし!ゼロスの瘴気!?あのナーガのお腹にダメージ食らわすなんて!?)」
ま、瘴気撒き散らすのも無理ないか。魔族って立場を人間なんかに馬鹿にされたんじゃあ、ねぇ...?
とにかく、ゼロスを止めないとナーガなら大丈夫だろーけど....
周りの人に危害が及ぶ!死人が出るっっ!!
「ゼロスっ;落ち着きなさいってば!」
問い掛けてみるも無意味...酷くなってるしっっ!
「――――....ったく。
じゃああたしガウリィ探しに行こうかしらっっ!?良ーの!?ゼロスっ」
ぶっっわぁあああああ!!!!
えッ、逆効果っ!?....ああもー!仕方ないっっ!!!
「うそっ!行かないからとにかく瘴気消しなさいってばっ、ね、ゼロスっ」
あたしは色々な覚悟を決めて、ゼロスのマントを掴んでグイッと引っ張る。
くぅ、瘴気にやられそうだけど...仕方ないっ!どーか死にませんように!!
チュッ
あたしは恥ずかしさを堪え。
ゼロスのほっぺにキスをした。うにゃーっ、ハズかしいっ//!そこっ!変な目で見ないっ!!泣
ッッッッッッッッッッッッッッッッ