風林火山
□第三夜
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こほん、と一つ咳払いをして「話を戻すぞ」と言う月夜に、私はどうぞどうぞと頷いた。
私の涙もすっかり落ち着いた。
というか私が泣いた所為で話が進まなくなったんだよな。申し訳ない。
「そなたをここに連れて来たのは、吹雪と嵐士の願いを叶える為。
そして、そなたの願いを聞く為でもある。」
「先程も言ったが、覚えておらぬかも知れぬからの…」と言う月夜の肩は心なしか下がっていて、益々申し訳なくなった。
「ご、ごめんね月夜。
…でも、私の願いを聞く為ってどういう事?まさか、叶えてくれるの?」
「うむ。その通りじゃ。」
冗談半分に言った台詞に頷かれ、私は固まった。
………この神様何と?
「あー、まあそういう反応にもなるよな。」
「俺らの前に現れた時もこんな感じだったよこの人。」
「何のキャッチセールスかと思ったぜ。」
「まさか神様だとは思わないよねぇ…」
交互に繰り返される吹雪と嵐士のやり取りが、耳を通り抜けていく。
え、だって。
願いを叶えくれる…と言っても、
「私の願い叶っちゃってるんだけど…?」
だって、私の願いは『吹雪と嵐士に会いたい』だったから。
もう叶えっこないよ。
そう言う私の膝の上に座っていたケイトが、何故か飛び降りて月夜の元へと走った。その動きは素早くて、引き止める暇もない。
やたらと月夜に、にゃーにゃーと鳴いている。
まるで、何かを訴えるかのように。
そんなケイトに、月夜はふっと笑った。
「藍。それ以外の願いを考えるとよい。その間、我は彗斗と話をしている事としよう。」
言うだけ言うと、私が聞き返す間もなく、月夜は足元に彗斗を引き連れ襖を開けて――
…ん?嫌な予感。