おきつねさまの恩返し

□26枚目
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ギャリーさんとヒイロくんの言い合い……いえ、ギャリーさんが一方的に怒っているだけでしたが……が、終った頃。
「そろそろ行こう」と、イヴがすくりと立ち上がった。





「イヴ、もう出発して大丈夫なの?」

「うん。大丈夫。」

「そう…。オッケー、じゃあ行きましょうか!」





ギャリーさんの言葉に、各々が出発する支度を始めた。といっても、鞄を持つ位ですが。
私は…えっと、ケータイ落としてませんよね、薔薇もちゃんと持ってるし……。よし、大丈夫。





「これからまた暫く歩くと思うけど……イヴ、疲れたらガマンしないですぐ言ってね?
遠慮なんてしなくていいから!」

「…分かった。ギャリーもね。」





そう言い頷きながらギャリーさんの手を握るイヴを見つつ、先陣を切るヒイロくんに続いて私達も部屋を出る。

必死で逃げ出した部屋に戻る理由も無いので前方の階段を下ると、殺風景な灰色の部屋から一変、鮮やかな紫色の壁に囲まれた部屋に出た。





「……なんの音?」





少し歩んだところで、コツコツコツ、と小さな音が聞こえてきた。
僅かな音だったけれどイヴにも音が聞こえたらしく、立ち止まってそう呟く。

繋がれた手と共に立ち止まざるを得なかったギャリーさんは、イヴの言葉に「音?」と首を傾げる。





「…なんか、コツコツって。」

「私も聞こえました。……あのドアですかね?」





私が指すドアに行こうとしたのかイヴは一歩足を踏み出して、その場で止まった。
どうかしたのかと首を傾げるとイヴは上を見上げ、その視線を追うとそこにはギャリーさんが居て。……成る程、と納得してしまった。

動かないギャリーさんが重りになってイヴも動けないんですね…。

 
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