おきつねさまの恩返し
□24枚目
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イヴの「かっこいい」発言の後、何故か動揺するギャリーさんをじーっと見つめていたイヴが不意にギャリーさんのコートを引っ張り、「……ボロボロ…」と呟いた。
端的な言葉に、少し落ち着きを取り戻したギャリーさんが「ん?」と少し首を傾げ、ああと頷く。
「コートがボロボロですって?
違うわよー、これはワザと!そういうデザインなの!」
「ふーん…?」
「……まあ確かに長年着てるからボロくはなってきてるけど…」
首を傾げるイヴにギャリーさんは苦笑を返す。
そういうイヴは、とイヴの服を見て、ギャリーさんは暫し黙り込んだ。
「……イヴ、アンタって良いとこのお嬢さんなんじゃないの?
だってその服……かなり上質な素材使ってるじゃない?」
「じょうしつ……?
おかあさんが選んでくるから、わかんない。」
自分のスカートの裾を少し摘んで見るイヴに一瞬口を噤んで、「まあそれでもいいとこのお嬢さんにかわりはないわね」と続けるギャリーさんに、ヒイロくんが口を挟んだ。
「上質?別に普通じゃないかー?」
「これが普通ってヒイロ……もしかしてアンタも、って何見てるの?」
言葉はギャリーさんに向けつつも視線は全く違う所に向けていたヒイロくんは、ギャリーさんの疑問に振り返った。
見ていたものを指で差しながら言う。
「美術館での禁止事項、だってさ。そんなの今更言われてもなー。」
結構破っちゃってるぞ、と続けるヒイロくんは悪びれた様子もない。
……悪いとは思っていないんでしょうね。
ヒイロくんの横に立って、私は貼り紙を読み上げた。