おきつねさまの恩返し
□23枚目
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「あら……まだ寝ててもいいわよ?
この部屋は安全そうだから、今のうちにしっかり休んでおきなさいな。」
「ううん、大丈夫。…ギャリー、これ。」
「あら、コート。わざわざありがとね。」
読んでいた本……さっきリョウさんが読んでいた本かな、を置いてコートを受け取り、羽織るギャリーさんにイヴは首を振り、「ありがとう」と笑った。
微笑ましいやり取りを眺めていると、まだ聞き慣れない声が「あ」と声を出した。
「その子目、覚めたんスね!良かった。
あ、俺はリョウ。宜しくッス。」
「……うん、わたしはイヴ。よろしく。」
はいッス!と笑うリョウさんとイヴから視線をずらすと、さっきまで優しく笑っていたギャリーさんの表情が固くなっていた。
……やっぱりまだ、リョウさんを警戒しているんだ。
何か、警戒を解く事が出来そうなものはないかな……敵味方は分からなくても、せめて美術品ではないと判断出来るもの…………あ。
「あのっ、リョウさん薔薇を持ってませんか?」
「え、薔薇…ッスか?」
私の質問に一瞬きょとんとしつつも、リョウさんは「持ってるッスよ」としっかり頷いてくれた。
それにギャリーさんが驚愕の声を上げる。
「ホントに持ってるの?」
「えっ、何でそこで疑われるんスか?
ちょっと待って、」
困ったように眉を下げてそう言うと、リョウさんは着ている白いカーディガン……いわゆる懐に手を入れ、そこから何かを取り出した。