おきつねさまの恩返し
□13枚目
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花嫁さんの部屋から目玉達の部屋へ戻って、私は言う。
「右奥に行きましょう」と。
ギャリーさんが、え、と声を上げる。
「でもエリー、アンタさっき…、」
「嫌な予感がしたから後回しにしただけです。
さっきはまだ見てない所がありましたから。」
「まあ確かに、見てない所って、もうあそこしかないよな?」
行くしかないんじゃないか?とヒイロくんが私に続いてくれた。
ギャリーさんは渋い顔をしたけど、他に行く所が無いのが事実だからか、結局は頷いてくれた。
ヒイロくんを先頭に進めば、直ぐに『奴』の姿は見えた。
ニタァ、とだらし無い笑みをした、青い絵。
私はこの絵を『花喰い』と呼んでいる。
というのも、この絵にはタイトルらしきものがないのだ。
つまり、固有名詞がない。それでは不便なので、勝手に名付けた。
理由は単純、花を食べるから、『花喰い』。
『えへへへ、へへへへへ、おはな…おはないいなぁ…』
「な、によコイツ…?」
不気味に笑う絵に、ギャリーさんが後退る。
さりげなく、後ろに居る私とイヴを自分の背に隠して。
『そのお花くれたら、ここ通してあげるよ、えへへ』
『花喰い』は私達を、私達の薔薇を見て、ニタリと笑う。
私は思わず、横に居たイヴの手を握った。
私はこの絵の、この癪に障る笑い方が大嫌いだった。
ゲームプレイ中から嫌で嫌で仕方なくて。
大嫌いな作品は、花喰いは、嗤う。