おきつねさまの恩返し
□11枚目
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「わあ、無個性さんがいっぱいです…。……無個性さんって、スタイルがいいですね。」
「うん、確かにスタイルいいな。でもエリー、そんな事言ってる場合か?」
部屋の中では、赤い無個性さんが三体、うろうろしていた。
活発に動く二体と、あまり移動せず、ゆっくりと動く一体。
入ってみて思ったのは、ヒイロくんの言う通り天井が低いという事。
悲しいかな、私は身長が低いからそこまで苦労はしないけど。
「『ラビリンス』、ですか。ここの名前でしょうか?」
「入って目の前の壁の貼り紙が名前って、わざわざご丁寧だな…。
まずは左から行くぞ、エリー。」
入って直ぐ、というか目の前の壁に貼られた紙を読むと、ヒイロくんは訝しげな声で言って、私に指示を出す。
私は言われた通り、左側に足を踏み出した。
私が先に部屋へ入ったから、先頭は私です。
少し入り組んだ迷路を、二人で縦に並んで進む。
えーっと、左に行って、上に行って、右に行って……
あ、ちょっとこの無個性さんが邪魔です…。どうしよう。
……うーんと、
「無個性さん、ちょっとごめんなさい…!」
「いや、謝ったからって無個性が動くわけ……
え?」
少々邪魔な位置に居た無個性さんに謝って、うまい具合に動いてくれた無個性さんの横を通る。
ヒイロくんの声が驚いているように聞こえて、思わず振り返りそうになって慌てて思い止まる。
そんな事をして、無個性さんにぶつかったら大変です。