おきつねさまの恩返し
□2枚目
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黒い腕に引きずり込まれて、放り出された場所は、
「えっ…!?きゃああぁあぁあああっ!?」
長い長い階段の上で、格好良く着地なんか出来るわけもない私は、ただ階段をゴロゴロと転がり落ちるしかない。
い、痛い!痛いですっ!
え!?何ですかこれ、どういうことですか!?
ん?あれ……痛い?私、今痛いですよね?
と、いう事は……夢じゃない!?
混乱した頭のまま転がり続け、そろそろ訪れる筈の衝撃に目を瞑ると、何故か「ギャーッ!!」という声がして。
その声と、来ない衝撃に驚いて目を開けると、誰かを自分の下敷きにしてしまっていた。
ギョッとすると同時に血の気が引いて、私はなるべく急いでその人の上から飛び退いた。
土下座の勢いで頭を下げる。
「いったっ…!何す」
「すっ、すみませんすみません!大丈夫ですか!?ごめんなさい!下敷きにしてごめんなさいっ!!」
「え、あ……だ、大丈夫よ、だからそんなに謝らないでちょうだい。」
どこか呆れを含んだ、しかし優しい声に恐る恐る顔を上げると、
その人は苦笑ではあるけれども笑みを浮かべ、私に「大丈夫?」と手を差し出してくれた。
や、優しい人です…!
それに凄く綺麗な人ですね……って、ん?
「…?」
手を差し延べる彼が不思議そうな顔をするのにも構わずに、私は彼をじっと見つめた。