小話集

□夕凪
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ジリジリと照りつける太陽の下で、セミ達は命を燃やし続ける。
ああ…今日も暑くなるんだなと起き抜けでぼんやりとした頭で考え、再びベッドへとダイブする。

カツンカツンと近付く足音が一つ。
思わず身構えるあたし。


「二度寝は許しません」
声の主は、あたしがくるまっていた薄手の毛布を強引に剥ぎ取る。
…グッバイ、あたしの睡眠時間。

「八時間も眠れば十分です」
「でもさあ…紗代。九時消灯は流石に早いと思う」
ウジウジとベッドの上で体育座りをするあたしを無視して、紗代はどこかに歩いていく。

「…何するの?」
「カーテンを開けて、ついでに換気をします。ほら、今日も良い天気ですよ」

部屋の仕切りの役割をしているカーテンが開かれ、窓は開錠された。
直後に爽やかな風があたしの髪をさらう。


「良い天気かどうかなんて分からないよ」と曖昧な表情で、あたしは返事をする。



…だって
あたしの目は、もう二度と光を捕らえることは出来ないのだから。
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