小話集

□something in the snow
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「珍しく積もったね……我が家だけ」

雪かきをする手を止め、辺りを見渡す。
うっすらと雪が残った住宅地。この分なら雪かきをしなくても、昼頃には溶けてしまうだろう。
そんな中で不自然に積もった一軒家、それが僕の家。
これは、先祖代々に継承された『ささやかな不幸』を引き寄せる、はた迷惑な体質のせいらしい。

これといって大きな被害がないので、今のところ不便は感じない。そう、今のところは。


「じゃあ母さん、灯油買ってくるね。他にいる物は?」
「そうねえ……思いつかないからいいわ。気をつけるのよ、咲哉」

空のポリタンクを二つ抱え、数キロ先のガソリンスタンドへ急ぐ。
いつもなら仕事帰りに父さんが買ってくるけど……あいにく出張中でそれは叶わない。



寒さに震えること一時間。ボロボロになった僕は、ようやく目的地に辿り着いた。
「またですか、桑名さん」と呆れ顔な店員さん。
僕の手からポリタンクを引ったくると、首根っこを掴み、店の休憩室に強制送還。手早く手当てをすると、自分飲めないので処理は任せました、と熱いコーヒーを押し付け休憩室を後にする。
いやはや……いつもお世話になります。

僕の好みのコーヒー。少しずつ味わい、飲み干す頃には芯まで冷え切った身体はポカポカと暖かくなっていた。
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