小話集

□My sister!
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少女の目の前には、こんもりと盛られたグリーンサラダが一つ。
むうと小さく唸り、フォークでサラダ皿をテーブルの奥に追いやる。

「こらっ麗!お行儀が悪い」と母からの一喝。
麗と呼ばれた少女は思わず身を縮ませるが、ポニーテールを勢いよく揺らし、負けじと不満を述べる。
…が、双子の兄 蓮の手によって一蹴されるのであった。


用事があると言い、出掛けた母親。そこに残されたのは、双子の兄妹と一つのサラダ皿。


「何で、何で…パセリのサラダになってるのよ〜」
「さっきのは麗が悪い、諦めろ」
それに、と蓮は続ける。「さっき僕が母さんを止めてなければ、もっとヒドいことになっていた」

納得がいかない〜と叫び、テーブルに顎を乗せる麗。しかしその直後には表情が一転し、キッチンへと駆け出した。

「ちぃ兄お帰りなさ〜い!何してたの?」
「ただいま、麗。蓮に頼まれた物を取りに戻った」と言いながら、わしゃわしゃと麗の頭を撫で回す。
ちぃ兄こと千歳は、麗と蓮の従兄に当たる。二人とそれ程年が離れておらず、小さい頃から何かと世話をしていた為、兄と慕われている。


それにしても、と千歳は元グリーンサラダ・現パセリマウンテンを一瞥し、ポツリと零す。

「パセリ、多過ぎないか?」
「ちぃ兄……多過ぎどころか、パセリしかないんだよ」

すると大きく伸びをしながら、蓮はリビングからキッチンへと移動し、ため息混じりの声で語る。
「仕方ないよ。麗の食わず嫌いと偏食が激しいから」
「確か『甘いもの、米、肉』以外だったよな」と千歳。

よくそんなんで生活出来るよね〜と棘しかない蓮の発言に、うるうると涙目になる麗。
まあまあと場の空気をなだめながら、リビングへと移動させ、千歳は二人と向かい合うように座った。
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