小話集

□My sister!
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「まあ、麗の偏食は追々治すとして……はい蓮、頼まれ物」
千歳は、異様に厚みがある茶封筒を蓮の目の前に置く。
ありがとう、千歳兄さんと黒い笑みを浮かべ、中身を確認する蓮。どうやら目的の物が手には入ったようで…その瞳はキラキラと輝いていた。

「ねえ、それって何なの?」と興味津々な麗。身を乗り出し、茶封筒の中身を覗き込もうとする。
その様子を見て蓮はクスリと笑ったが、直後に眉を寄せる。

「んー見れば分かるよ。…さて吉乃、お前はさっきからそこで何をしている?」

蓮は席を立ち、キッチンの戸棚を勢いよく開ける。
そこには先程『吉乃』と呼ばれた人物が簀巻きにされていた。


「え!?吉乃さん居るの?」
「ああ居るが、正直笑える姿だから麗は見ない方が良い。悪いけど千歳兄さん、手を貸してくれない?」と若干…かなりキレている蓮。


返事の代わりに短く溜息をつき、千歳はキッチンへと足を進めた。

「吉乃、さん。何しているんですか?」

話し方こそ柔らかいが、全く笑っていない。
千歳は、吉乃を戸棚から叩き落とした。その間10秒。
それから蓮は鉄槌と称して、吉乃を足蹴にしつつ、リビングへと運んだ。その行為は端から見れば、大の大人を虐める子供の図。

しかし…吉乃はMに開花しつつあり、また蓮の奴隷に近い存在と自称しているので、当人には全く問題ないようだ。





さて、と蓮はリビングを見渡す。

カーテンが引かれ、間接照明が僅かに灯るだけの薄暗い部屋。
先日買い換えたばかりの52型の地デジ対応のテレビの前には、未だに簀巻き状態の吉乃。
そんな彼を何かの儀式のように取り囲むように、麗・蓮・千歳の三人は座っている。

瞬間、思案し蓮は静かに立ち上がる。
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