小説庫(書く所)

□※好きor愛してる
2ページ/4ページ

とりあえず、今日の巡察までまだ時間がある。


今はすることが見つからない。
時間を潰すために、屯所内を巡回することにした。


別に外へ出てもいいのだが、天候が良くない。散歩をするには気が進まなかった。


総司のこともあってか、つい一段と深いため息が出た。







「あ。一くんだ」

「え?あ、斎藤さん。こんにちは」



「…総司と雪村か」




雪村はともかく…
噂をすれば…どころではない。
思考にふと出てきただけで現れるとは、待ち伏せでもしていたのか。





「どうしたの?疲れた顔でため息なんかついて。もしかして土方さんにかなり酷使されて参ってる?」


「お、沖田さん…っ」



雪村が焦ったように総司を見るが…本人は完全無視だ。





「副長に非はない。
あんたのことで悩んでいたんだ」


「僕のこと?へぇ、嬉しいな。何を悩んでたの?」



じりじり、と壁に追いやられる。
こういうことは日常茶飯事だ。
…慣れとは恐ろしいもので、雪村が居ても全く気にならなくなってきた。



「千鶴ちゃん」


「…はいっ?」


「悪いけど、僕の代わりに食事の準備をしてくれない?
平助に任せっきりなのもどうかと思うし…

代わりに、次の千鶴ちゃんの番には僕がやるよ」




「は、はい!わかりましたっ」




トタタタタッ――と小走りで走っていく雪村。





「千鶴ちゃん、可愛いよね」



「…あんたのことは、良くわからない」



本当に良くわからない。
女でもない俺に言い寄るなんて、変な奴だ。


そう、俺が総司を変だと思うのは、まさにこの瞬間のことだ。




「どうして?」



「俺は男だ。雪村のように女ではない。それは分かっているだろう、こんなこと、あんたに何の得がある?」





とん、と背が壁についた。
顔の横で壁に手をつき、俺の動きを制限する総司。


翡翠の綺麗な瞳が、俺の視線を絡めとる。






_
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ