帰りに偶然美琴に会う。
そして、一緒に出掛ける。
それが俺たちのお決まりパターン。



偶然routine



今日は美琴が買い物に行きたいと言う。
俺には予定も何もない。だから、一緒に買い物に行くことになった。

「何買うつもりなんだ?」

「んー?あぁ、手袋でも買おうかなってね。この頃寒いし、指が冷えちゃって大変なのよ」

ふーん、とだけ返事をして、前方を見る。

冬だけあって、陽は短く、外はもう薄暗い。
ぼんやりとした闇に、色とりどりのイルミネーションが映えていた。
その明るい電灯の下には、寄り添うよえにカップルたちがいる。

自然と彼らに目線が行ってしまった。

学生もいれば、会社帰りなのか、社会人もいる。

「きれいね」

「あー…そうだな」

美琴が俺に話しかけるも、俺はもうイルミネーションなど見てはいなかった。

「みんな幸せそうだよなー。ま、上条さんは不幸な人間だから仕方ねーけど」

「何?あんた、私といるのに不幸だって言うの?」

「ちょっ、ビリビリさせんな!でもよー、お前が俺の彼女ってわけでもないでせう?」

もしそうだったら、どれだけいいか。
そうは言っても、美琴は俺のことなんてどうも思っちゃいないんだろーな。

「なら、付き合っちゃう?」

「ゲホッ」

「なんて冗談だけど」

美琴の言葉に咳き込んだ。

「ゲホッゲホッ」

「何狼狽えてんのよ?大丈夫?」

背中をさすってくれるが、むしろ背中が落ち着かなくなる。
お前は冗談のつもりでも、シャレになんねーぞ?

「あー何か悪いことしちゃったわね。さっきのは冗談にしても、手ぐらいなら繋いでもいいわよ?」

ほれほれ、と言うみたいに、手のひらをヒラヒラとこっちに向ける。


「あんたなら、…当麻ならいいわよ。別に減るもんじゃないし」

小さな美琴の手を俺の左手が包み、俺たちの距離が縮まった。

「姫…何故このようなことを?」

「うん?だって寒いじゃない?手繋いでたらあったかいでしょ?」

ギュッと握られる手が熱くて、寒さなんか気にならない。

「これからもこうして繋いでくれるんなら、手袋なんていらないかもね」

陽が落ちたせいで、フフッと笑う美琴の顔が見れなかったのは、残念だと思った上条であった。





偶然も毎日続けば、日常。
──偶然routine──

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