BOOK〜HUNTERXHUNTER〜

□Love may begin suddenly
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「ビスケの髪って長いよな…?」
「なんで疑問系なんだわさ?見ればわかるでしょ。」
ビスケは自分の髪に視線を向けているキルアを怪訝な顔で見る。
何故唐突にそんな分かり切った質問をするのかが、ビスケには理解できなかった。
「いや、よくツインテールにしたり、今みたいにお団子にしたりしてるからさ、おろした姿見てねーなって。」
「見たいの?あらまあ、なんか厭らしいだわさ☆」 
ビスケはキルアを茶化すようにニヤリと笑う。
「な、なんで厭らしいんだよ?」
キルアが少し頬を赤く染め慌てている。
(あらあら。まだまだうぶだわね。)
彼女はキルアの反応があまりにも期待通りだったため、もう少しからかうことにした。
「おろした姿見たいなら、髪ほどいてみるんだわさ。」 
ビスケが自分の頭をちょいちょい指さした。
「え!?…別にそこまでして見たくねぇし。」
彼は首を大袈裟なほど横に振る。
「もしかして…恥ずかしい?」
彼女は楽し気な表情を浮かべている。
「なんでババァの髪触るのが恥ずかしいんだよ?んなわけないだろ!」 
面白いぐらい自分の思った通りの反応を示すキルアに、思わず吹き出しそうになるビスケ。
キルアは動揺して顔が真っ赤だった。
「じゃあ、ほどいて。」
ビスケは自分の頭をキルアに近付ける。
早くやるだわさ、と促すように頭をクイクイ動かす。
「…分かったよ。やってやるよ。」
少し拗ねたように言うと、彼はビスケのお団子に触れる。
そして僅かに震える手で、ゆっくりとピンを抜いていく。
キルア自身、何故自分がこんなにも緊張しているのか理解できなかった。
ビスケの髪は徐々にほどけていく。
そのたびに彼女の柔らかい髪の匂いが鼻をかすめる。
(なんでこんなに柔らかくて良い匂いがするんだ?)
彼女の髪に触れるたび、鼓動が速くなる。
彼はドキドキしながら、最後に髪を結んでいた紐をほどく。
綺麗な髪は重力のせいで、下にパサリと落ちる。
彼はそんな艶やかな髪に少し見惚れてしまった。
「綺麗だ―とか思ってるでしょ?当たり前だわさ!私の髪だからね。」 
彼女は意気揚々と言ってのけ、満面の笑みで振りかえる。
「……。」
彼女の自信に満ち溢れた笑顔に思わず見入ってしまったキルアは、ただただ黙っていた。
何も言うことが出来なかったのだ。
自分が今まで知らなかった己の気持ちの片鱗に、気付いてしまったから。




恋は突然。



end

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