BOOK〜HUNTERXHUNTER〜

□extraordinary
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「……海?なんでだろう…?」
朝目覚めると、そこには海が広がっていた。
「??俺、確か森の中で寝てたような…。」
ゴンは訝しげな顔をしながら、自分が現在置かれている立場を認識しようと辺りを見回す。
「…なんで俺…浜辺で寝てんだろう?」
現在彼はGIにいるはずで、近くに浜辺等ない所で寝ていた。
だが、目覚めると海にいたのだ。
「…???キルアとビスケもいないし…。どうしちゃったんだろう、俺!」
ゴンは徐々に自分がどんな状態であるか理解しだし、周りにいるはずのキルアとビスケがいないことに動揺し始める。
「…ゴーン!!」
背後からキルアの声が聞こえる。
「キル…ア??」
見知った声が聞こえ安堵したゴンが振り返り見たキルアは…
「……キル…ア?…なんで…さ、ビスケの服着てるの?」
ゴンは顔を引き攣らせながら、背後から嬉しそうに走ってきたキルアに恐る恐る尋ねる。
「何言ってんだわさ。私よ、私。ビスケだわさ。」
キルアが通常の彼では有り得ない言葉遣いをして、ゴンを不思議そうに眺めている。
いやちょっとまって…とゴンは、ビスケだと言い張っているキルアの前に自分の掌を出した。
“ストップ”という表現が相応しいポーズである。
「…?どうしたんだわさ。」
「俺をからかってるの?」
ゴンはショート寸前まで熟考した結果、しぼり出した問いがそれだった。
「…からかう?何言ってんだわさ?」
キルアはとても冗談とは思えない冷静な表情でゴンを心配そうに見ている。
「ビスケー!ゴンー!!」
ビスケ姿のキルアを見て狼狽しているゴンに追い打ちをかけるように、誰かが走って向かってくる。
「………だよね。そうなるよね。」
ゴンが思わず自分のお凸に手をあてて、溜息を洩らす。
彼が想像した通り、キルアの服を着たビスケだ。
「何してんだよ。早く修行始めようぜ。」
ビスケはキルアとそっくりな口調で彼等を促す。
彼女もまた、まるで自分がキルアでいることが至当だ、と言わんばかりである。
「……なんか、ゴンが変なんだわさ。」
フリフリのゴスロリっぽいドレスに身を包み心配そうに小首を傾げてゴンを見つめるキルア。
その横で、ゴンはいつも変だろーっと茶化すように笑うビスケ。
荒唐無稽なこの設定をどうにかして通常に戻したい…ゴンはただそれだけを願った。
「…あーもう、俺が変なんじゃなくて…キルアとビスケが変なの!!」
ゴンは必死で自分が見たままを説明する。
「だってさ、どう見たってキルアがビスケのフリフリのドレス着てるんだもん!気持ち悪いよ!!」
彼はビスケだと言い張っているキルアを指さす。
「それにそれに、ビスケだっておかしいよ!何でキルアの服着てんのさ!!どう見ても女の子が無理やり男の子っぽくした感じだもん!変だよ!」
続いてゴンの矛先が、キルアっぽい口調をしているビスケにうつった。
「もう、だから普通に戻ってよ。」
自分が言いたいことを言い終えると、スッキリしたのかゴンの表情は清々しいものだった。
一方…、
「だーれーがー、気持ち悪いって?」
「だーれーがー、無理やり男っぽくしてるって?」
沸き立つ怒りを抑えられず、身体を震わせている二人がいた。
「…あ……。」
彼等の怒りを察知するのが遅かったゴンは、すでに彼等が振りかざし握りしめていた拳を避けることは不可能に近かった。
「ごめんなさっ…」


バコンッ!!

謝る間もなく、ゴンは両サイドから頬を殴られた。

………----


「ゴーン、大丈夫か?」
「起きるだわさ!」
耳元に届く二人の声。
それは段々大きくなる。
「……んっ…。」
改めてゴンが目を開く。
一番最初に視界に入ったのは、キルア。
キルアはいつもと同様の服を身につけている。
そして二番目に目に入ったのは、ビスケ。
彼女もまた通常のゴスロリドレスを着飾っていた。
ゴンはゆっくりと起き上がり、辺りを見回した。
そこは彼の見知った森の中だった。
「…さっきのは…夢だったんだ。…本当、良かった。」
ゴンは安堵し、肩を撫で下ろす。
そんな彼を見て、疑問符を浮かべているキルアとビスケ。
「夢でもみたのか?」
キルアが訝しげな表情でゴンに問いかける。
「………まぁね。」
「どんな夢だったんだわさ?」
ビスケが何気ない問いに少し固まったゴンは、
「……秘密。っていうか言いたくない。」
と顔色を悪くして答えた。
「「…??…」」
キルアとビスケは首を傾げて、ゴンを眺めている。
ゴンはそんな二人を見て苦笑した後、空にある眩しい太陽を見上げなが願った。

『もう二度とあんな悪夢を見させないでください!』

だがその願い虚しく、翌日また見ることになったとか…。





end

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