BOOK〜HUNTERXINDEX〜

□H.I.I.W.3
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ただでさえ人通りが少ない場所で、完全下校時刻を過ぎていたせいか、騒ぎに気付く人はいなかったようだ。
その環境はキルアにとって、財然から自分の姿に戻り、実験をするには僥倖だったに違いない。
だが、一人の少女、御坂美琴には露見してしまった。
「財然さん……じゃ…ないわよね?」
「……財然きいって人間は存在しない。」
今から嘘を突き通すことは無理だと判断し、キルアは有りのままを話すことにした。
「財然きいは俺の仮の姿ってやつなんだ。」
「……なんで…わざわざ…変装なんかしてるの?…あと、アナタから超能力でも魔術でもない“モノ”が感じられるんだけど…それは…何?」
美琴は慎重に言葉を選びながら、恐る恐る問いかける。
彼女が何故慎重になるかというと、キルアの得体のしれない戦闘力のせいである。
彼は彼女の目の前で、魔術師をあっさりと倒している。
彼女が目で追えないほどの速力で戦っていた彼のことを、警戒しない方がおかしい。
「…答えてもいいけど、後悔してもしらないぜ…?俺としては答えて、アンタをコッチに巻き込むことになったら嫌なんだけど。」
キルアは思う。
この御坂美琴は正義感が強く優しい人間なんだと。
彼女は頭上に突然現れた魔術師に、能力を抑え軽い電撃を放った。
抑えなければ男が死んでしまうのではないかと懸念したからだろう。
更に、彼女は財然を庇うよう立っていた。
今日会ったばかりの人間を疑いもせず守ろうとするその優しさに、キルアは感嘆した。
変装の理由を話すことになれば、自分が何故正体を露わにしたら都合が悪くなるのか等、必然的に説明せざるを得なくなる。
そんなことを話してしまえば、この正義感が強くて優しい人間が、どのような行動をとるか予想はつく。
「…私、巻き込まれることには慣れてるけど。そんなことよりも、私はあなたがなんで変装してるのか知りたいのよ。」
彼女は平然とそう言いのけた。
「……了解。それじゃぁ、外で話すのもなんだから、寮に来てくれない?」
「…分かったわ。」
彼女はコクリと頷いた。
通常の美琴なら、男子の部屋なんかに一人で行ったりはしないだろう。
だが今回ばかりは特別だ。
彼女はキルアが“一体何者なのか”という疑問で頭がいっぱいだったからである。
キルアは男を縛り誰かに電話をし終えると、ついてきて、と彼女を促し、歩き出した。
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