BOOK〜HUNTERXINDEX〜

□H.I.I.W.
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--学園都市--
「そろそろか。」
うす暗い部屋に佇む男が一人。
彼の周りには所狭しとパソコンや機械が置かれている。
「これで…新しい世界との道が開かれる。」
彼の顔はパソコンの画面から漏れる光でしか確認できないが、恐らくほくそ笑んでいるだろう。
静寂に包まれた暗闇の部屋で、ボタンを押す音だけが響き渡った。


--NGL--
「…ゴ…ン…」
銀髪の少年は、自分の目の前にある光景が未だに信じられないという表情で、
見つめていた。
「……ごめん、キルア。」
銀髪の少年が見つめている先には、黒髪の少年、ゴンの後ろ姿があった。
ゴンは、銀髪の少年…キルアの方を振り返る。
ゴンの瞳には輝きはなく、ただ涙を流していた。
「俺、もう力がないみたい。」
彼の周りには原型をとどめていない血まみれの“物体”が転がっていた。
もちろん彼も血まみれではあったが、彼はかすり傷一つついていなかった。
つまり、彼にこびりついている血は、彼の血ではない。
彼が殺したこれら“物体”達の血であることが分かる。
「…念は使えないや……。」
「……。」
先ほどまで、ゴンは少年と言い難い姿…大人という表現が相応しい姿になっていた。
彼は大人になって、現在転がっている“物体”とかしたキメラアント達と戦っていた。
『戦っていた』という表現が当てはまっているかどうか分からないほど、一方的に彼がキメラアントを虐殺していた…といっても過言ではない。
「…俺、これからどうしたらいいんだろう…。カイトもいないし、念も使えないとなると…ジンも探せないし。」
ゴンの声はふるえていた。今にも消えてしまいそうな小さな声。
「……。」
キルアは彼に何を言えばいいのか見当がつかず、言葉に詰まる。
気まずくなり、無意識に俯いてしまった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

突然、爆音とともに地面が揺れる。
「!?」
キルアが顔を上げると、大きな黒い穴が出現していた。
奥がまったく見えず、どこに繋がっているのか分からない。
ただ、とてつもない莫大な“エネルギー”を感じる。
「呼んでる…。」
弱々しい声が微かにキルアの耳に届く。
「…?」
彼は訝しげな目でゴンを捉える。
「俺、行くね。…ごめん。」
ゴンは感情が読み取りにくい小声でそう呟くと、キルアから背を向け、黒い穴に向かって歩いて行く。
「……?…。」
ただキルアは見ていることしか出来なかった。
先ほど大人だったゴンを眺める時と同じように…
動けなかった。
その間にもゴンは黒い穴へと近づいていく。
そして、黒い穴の目の前でゴンは立ち止まり、キルアの方に振り向く。
「バイバイ、キルア。」
この時、時間が一瞬止まったのではないかとキルアは錯覚した。
風の音、大地の音…全てが無気味なほど静寂に包まれる。
………………。
ゴンは音もなく、消えていった。
黒い穴を見ても、もう彼はそこにいなかった。

「ゴン……ゴン!!」
キルアが叫んだ時にはもう遅い。
そこには誰もいない。
死体と…黒い穴しかない。
「…くそ!!」
彼が黒い穴に入ろうと動きだそうとした瞬間、誰かに腕を掴まれた。
「キルア!待つんだわさ!」
そこにはツインテールの少女が立っていた。
「ゴンがあの黒い穴の中に入ってったんだ!だから俺も!!」
「キルア!!とりあえず、落ち着くんだわさ!!」
少女はキルアを掴んだ手をさらに強くする。

「あんたでも分かるでしょ?あの黒い穴から感じる得体のしれない不気味な“エネルギー”。闇雲に入って何があるか分からないでしょ!」
彼女の眼は真直ぐにキルアを見つめている。
「ゴンを追うにしても、まずこの黒い穴が何か調べてからだわさ!分かった?」
僅かな沈黙が彼等の間に流れる。
「「………。」」
だが、キルアによってそれは破られた。
「…分かった。…分かったから、手離せ、ビスケ。」
ビスケと言われたツインテールの少女は、キルアからそっと手を離した。
「……んでどうやって調べるんだ?」
彼は今までの狼狽していた表情とは打って変わり、冷静を取り戻した表情になっていた。
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