祐悠
□わがまま
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※祐悠+千
「ね、ゆっきー達の部屋見せて!」
家に遊びに来た千鶴がひととおり祐希と一緒になってやっていたゲームを終えると、思い出したように、笑顔を輝かせてそう言った。
「ね、見せてよ?」
ふたりの後ろのソファーにくつろいでいた悠太にも無邪気に聞いてくる。なんで、祐希に最初に聞いたくせに。祐希は何も応えないし千鶴はしつこいし。
「や、特に何もないけど…」
「いいじゃんいいじゃん、見るくらい!」
「祐希の漫画とか散らばってるし…」
「たぶん俺っちの部屋より綺麗だと思うよー?だって、ゆうたん掃除するでしょ?」
千鶴の頭の中で祐希の面倒見係と確定されているのが嬉しいのか悲しいのか。きっと他のふたりにもそう映ってるんだろうな、と考えると微妙だけど。
減るもんじゃないんだしー、と千鶴が言うので仕方なく悠太は立ち上がって案内をしようとする。が、千鶴が「やっほーい!双子さん達の部屋突入!」とかテンション高めでお送りしているところ、
「ヤダ。入らないで、千鶴。」
と、今まで無言だった祐希が突然声を上げた。「なんでなんでいーじゃん」なんて言いながら千鶴が祐希の方を向くと、千鶴はそのまま固まってしまった。
何故ならば、物凄い冷たい目で千鶴を睨んでいたからだった。
「ダメ。千鶴、今日はもう帰って。また明日ね」
「お、おぅ……」
ぎこちなく作った祐希の笑みが怖い。兄であるはずの悠太から見ても恐怖だった。
千鶴は、「お邪魔しましたー!」なんてそそくさと帰っていったので、悠太は祐希に聞いてみる。
「なんで、そんな、怒ってるの」
「……………」
「ねぇ、祐希くん?」
「あの部屋に、他の人、入れないでよ」
リビングに座り込んだまま、さっきの目とはまったく違う、上目遣いで祐希は言った。
「俺らの、俺らだけの、聖域なんだから」
だから、誰も入れないで。
そんな子供じみたわがままを聞いた悠太は少し笑って、それから祐希に、優しくキスをしてくれた。