「なに、この手」 そう言って悠太は何の合図も了承もなしに机に向かっている自分の左腕を掴んできた祐希の右手を凝視する。 突然だった。あ、でもそんなのいつものことか。それから祐希の顔に視線を移した。 祐希は表面的にはいつも通り、平常運行。別に機嫌が悪いとかじゃないらしいです。 「……だって、暇なんですもん」 また始まった。祐希の『構って』攻撃。 しかしながら生憎悠太にはやらなければならないことが山積みだったりした。 「あのね、例え祐希くんが暇で仕方なくても我慢しなきゃいけないときもあるでしょ、」 だから、そんな顔されても困ります。祐希の表情が心なしかムスッとしたので付け足し。 ほら、いつもみたいに漫画読んでればいいじゃん、と悠太が提案すると、祐希は読み終わっちゃったんだもん、と言った。 新しいの買いに行くのも夕方の時間帯としては面倒。読み返し?もうした。 「そしたら、今日はまだ悠太とそんなに喋ったりとかしてないな、って思ったから」 「………そういうの自分勝手って言うんだよ」 「自分勝手で結構です」 いつにも増して呆れた調子で悠太が言うので、もはや開き直る。だって俺は暇なんだから。 「…ていうことはアレですか。俺は祐希にとってただの暇潰し、だと……」 言いながら、悠太は視線を逸らした。え、なに。何の心配をしてるの。てか、何自分で言ったことにショック受けてんの。可愛いな、もう。 「そんなんじゃない。むしろ、逆」 ぽかんとした悠太が再びこちらを向く前にすかさず祐希は悠太を後ろからぎゅ、と音がするくらい抱き締めた。 「!」 一瞬のうちに耳まで真っ赤にしちゃって。本当に構って欲しいのはどっちなの。 黙ってしまった悠太の耳元で、祐希は小さく呟いた。 「暇なのに、悠太に触れないでいるとか、時間の無駄」 Time (少しでも長く、触れていたい) <あとがき> このあと悠太くんは美味しく頂かれてしまえばいい。 20101004 |