DQ

□赤
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※ピサ勇、微グロ、裏

ピサロは驚く程潔癖症な男だった。人間と同じ空気を吸うのが嫌だと、町へ入るたびにそう言った。人間の物には勿論、俺たちにも極力触れないようにしていた。それにも関わらず、ピサロは血を見るのが好きだった。魔族の王であるのをいい事に、自分が気に入らない魔物はとことん切り刻んだ。魔物を倒す事に喜びを覚えていた俺が引くくらいだから、仲間たちの目にはさぞや恐ろしく映っただろう。ピサロはほとんどいつも無表情だったが、血を見ている時だけは明らかに興奮しているのが分かった。俺はそこに、自分と似た何かを感じ取っていた。


俺が戦闘中に怪我をすると、何も言わなくてもピサロは回復呪文を唱えてくれた。俺はあの人なりの善意でそれをしてくれているんだと思っていた。だから俺が魔王なんかに「ありがとう」なんてらしくない言葉を言って魔王がつんとした態度なのは、「これくらい当たり前だ」とか、そのような事を意味しているのだと思っていた。


勿論ここまではあくまで表面上の話で、その「ありがとう」の裏には(こんな事で許されるとでも思ってるのか)と見下した気持ちが込められていた。ピサロもその事には随分と前から気付いていたようで、それでも俺に呪文をかけるのは、それによって見返りを求めているのとは違った、何か別の理由があるらしかった。
(そもそもピサロが見返りを期待して何かをするなんて事はないと思うが。あの人は俺とは違って、ひねくれた部分が何一つない真面目で単純な奴だった。俺はそんなピサロが少し羨ましかった。)


俺はピサロの顔を見て話す事がほとんどなかった。理由は簡単で、俺がピサロを嫌いだからだった。そんな事には仲間たちも最初から気付いていて、俺がピサロに関して苛々し始めたらすぐに年長者のライアンかブライが仲を取り持った。彼らは、それが表面上の事だというのに気付いていないのだった。




――俺たちがそういう関係になったのは、ピサロが仲間に加わって間もない頃だった。きっかけは、俺が寝ているピサロの顔に向かって吐精した事だった。不健康そうな白い顔よりも俺の欲望の方がよっぽど健康的なものに見えた。しかし何故そんなことをしたのかと聞かれても俺にだって分からない。ただ、その時の俺はピサロの頭に巻かれたバンダナに異常に興奮していた。目を刺激する色。理由をつけるなら多分、それのせいだ。
すぐに目を覚ましたピサロは、意外にも怒らなかった。逆に、いつもと何ら変わりない態度だったので俺は拍子抜けしながらも、自らピサロの上に乗っかった。ピサロのそれは、まさしく赤黒い凶器のようだった。それから、俺たちは宿をとるたびにそんな事をしていた。




行為の最中に、ピサロはよく俺の肩に吸い付いた。最初俺はそれが単なる嗜好だと思っていた。

ある日ピサロは牙を立てて思い切り俺に噛み付いた。痛がる俺を気にも止めず、噛み付いたそこには傷が出来て血が流れた。ピサロはやはり分かりやすくその血に興奮を示した。俺の穴に抜き差ししながら夢中で俺の血を吸った。



「本当に、血が好きだな」

「ああ。お前のは味が良い」

「でも、ちゃんと人目を憚るくらいの事はするんだな」

「……どういうことだ」

「バトル中。あんたが俺にベホマかけるのは、俺の血を見たらあんたのソコが勃っちゃうからだろ」

俺はベッドの脇に立て掛けてあった剣を取り出して左の腕のちょうど真ん中辺りにすうっと線を引いた。隣で寝そべっていたピサロは俺から流れる血を見るや否や、すぐにまた俺を押し倒してそこに吸い付いた。俺はただの動物のように単純なピサロが好きだった。よしよしというように月に光る銀を撫でた。


ピサロは次第に、右手で俺の腕を持ち上げ、左手で俺のとピサロのとをまとめて擦り上げた。彼は新たに俺の手首に噛み付いて赤を吸っていた。しかしそれだけじゃ物足りない俺は彼に「ピサロ、こっち見て」という注文をした。


言われたピサロはすぐにこちらを見た。しかし見たからといって何をする訳でもなかった俺から、ピサロはすぐに目を逸らした。

「ずっと俺の事見てて。お願いだから」

二度も頼む俺をうるさいとでも思ったのか、嫌そうに俺を捕らえる瞳。あぁ、いい、それがいい、俺をもうどこにも行かせない、といったような眼差しがいい。俺の大好きな色をした、あんたのそれが、最高にいい。

「お前は、私と目を合わせるのが好きだな」

「そうでもないよ」

「だから普段は私を見ないのか」

「まさか。嫌いだからに決まってるだろ」

俺はピサロみたいに単純じゃないから、こんな些細な事にも平気で嘘を吐いた。ピサロもそれは十分に承知していたので、血が滲む口元を綻ばせながら俺を見つめ続けた。



「人間の町は嫌いなのに、ベッドには一緒に入るんだ?」

「お前との行為は嫌いではないからな」

「そう。俺は嫌だけど」


俺は笑って、(次はどうしようか)と思考を巡らせた結果、ピサロの股間に顔を近付けるに至った。嫌だと言いながら、始めるのはいつも俺からだった。だからピサロに「待て」と言われたのには、腹が立った。

「何?もうやめるの?」

「いや…、」

言葉を続けるより先に、ピサロは何を思ったか、そこらへんに放置されていた彼のバンダナを手に取った。そして、それを使って俺自身を固く縛った。あぁ、なんて心地いい光景。

「本当なら、ここに傷を付けてやりたいのだがな」

「はは。それはさすがに耐えられないよ」

でも想像しただけでぞくぞくする。再びピサロのそれに視線を移すと、同じような事を想像したらしい彼自身が勃ち上がっていた。グロテスクなそれを見ながら俺は、やっぱり赤が好きだなと思った。

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