GS

□1話
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ズルズルと引きずられるように歩いて、バスに乗りやっと着いた先に学校の校舎が見える。
周りには、私と同じように真新しい制服に身を包んだ新1年生。
その中に一際目立つ2人組み・・・いや3人組みを見つけた。


「あらら、あれは歩く校則違反だな。ふふ・・・これから生徒会は大変だ」

「お兄ちゃん、他人事みたいに言ってるけど自分だって生徒会のメンバーでしょ?」

「ハハ。そうだった」


そう言って笑うお兄ちゃんの顔を覗き込むと、なんとも楽しそうに悪そうな笑顔だった。
ちょっと生徒会の人たちが可哀想かも・・・
そんな事を考えながら例の3人組の横を通り過ぎた。
なにかものすごく視線を感じたけど知り合いじゃないし、取りあえず気づかない振りをしとこう。


校門をくぐるとワラワラと数人の女子生徒に囲まれた。どうやら上級生のようだ。


「ユキー!久しぶりー。春休みは何してたのー?連絡してっていったのにーっ」


皆同じような事を言いながらお兄ちゃんに近づいてきて私はあっという間に弾き飛ばされてしまった。
あまりの自分の兄のモテぶりに驚いて、尻餅をついたままボーっとその様子を眺めていたら


「うわっつ!」


体がふわっと宙に浮いた。
誰かに体を持たれて体が宙に浮いてるみたい。


「大丈夫?」

「は、はい・・・すみません」

「うん。俺ヒーローだから。助けるの当たり前」

「ありがとうございます。あのー・・」

「ん?なに?」

「そろそろ降ろしてくれても大丈夫です」

「あ!忘れてた」


やっと地面に足がつけた所で初めて顔を見る。真新しい制服をビックリするくらい着崩して、ネクタイもしていない。
金髪がやたらと似合ってる色白な・・・


「カッコいい・・・」

「ん?」


しまった。思った事を思わず口に出してしまった。
マズイ!と思って口を塞いでいるとやっと気づいたお兄ちゃんが駆け寄ってきた。


「小雪!大丈夫か?」

「うん。大丈夫。彼が助けてくれた」


彼を見上げるとすでに歩きだしていて
クスクスっと笑いながら「ばいばい」と言ってこちらを見ていた2人の元へ戻って行った。


(きっと1年生だから、また会えるよね)


「意外と良い奴なのかもな。小雪、後でちゃんとお礼言っとけよ」

「わかってる。それよりお兄ちゃん目前・・・」


なぜかお兄ちゃんの周りにいた女の人たちが物凄い形相で見てる。
しかも私を。
・・・何故?・・もしかして・・・


「あ、わかった。しっと・・・ムグッ!」


そこまで言った所でお兄ちゃんに口を塞がれる


「ハハハ、この子は僕の妹だよ!」


そう、今更ながら私はこの、赤城一雪の妹なのである。


「エー!ユキの妹ー?カワイイー」

「どうりでカワイイと思ったー。よろしくねー」


手のひらを返したようなとは正にこの事だ。なんなんだこのノリは・・・ついていけない。
お兄ちゃんに助けを求め「入学早々から遅刻させるわけにはいかないから」と言ってその場を後にした。


この学園無駄に広いから玄関までだいぶあると言うのに全く進んでいなかった。
未だチラ見する人は絶えず面倒になってきたのであえて”お兄ちゃん”を強調して会話する。


「ちょっと、お兄ちゃん!なにこれ聞いてないよ。いつもこんななの!?」

「仕方ないだろ、まさか始業式の登校からこんなとは思わなかったんだよ。
それより、さっきの大丈夫か?怪我とかしてないよな?」

「大丈夫。ちょっと飛ばされただけだから」

「ごめん。これからは、僕も気をつける。だから小雪も気をつけろよ!」

「へ?なにを?」

「なにを?じゃないよ!余計な一言!言わないように気をつけろよ」

「それはお兄ちゃんでしょー?私のはホントの事だし」

「ホントの事でも!それで逆恨みされたら面倒だろ?僕は男だからいいけど」

「うーん?」

「わかった。じゃあこれだけ。やたらと男に”カッコいい”なんて言うなよ!勘違いされるから」

「勘違い?見たままを言ってるだけなのに?なにを?」

「・・・・もういい。じゃあな。(変なとこ鋭いくせにこーいう話は鈍いんだよなー・・・)」


呆れるようにしてお兄ちゃんは去って行った。まあ、お兄ちゃんにはあんな風に言ったけど
思った事をあまり口に出すのは気をつけようとは思った。特に女の人には・・・
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