GS

□6話
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「はぁ…疲れた……」

「…おい、おまえ、何してるんだ?」

「ぎゃっ!!」


ぎゃっってなんだよ。と不機嫌そうに言うのは設楽聖司。
小雪は彼が放課後にすごしている場所に居た。
しかも隠れるように。

週明けの今日。見た目がガラッと変わった小雪を一目見ようと教室に沢山の人が来て
さっきも帰りに遊びの誘われたのを逃げてきたのだった。
ここなら滅多に人が来ない。
理由は設楽が冷たいからだろう。


「あ、ちょっと休憩に…」

「ふぅん…おまえ、なんか雰囲気変わったか?」

「え?髪型だけですよ」

「そんなの見ればわかる。…ま、いいか」

「?」

「今日は生徒会へは行かないのか?」

「行きますよ〜。宿題やったら」


そう言うと小雪は宿題を、設楽はいつものようにピアノを弾き始めた。

最近ピアノを弾く日はほとんど小雪が側にいた。
最初のころよく来ていたもう一人の一年の女子は来なくなったからだった。
来るな、と追い払っていたからだろうか?と少し気にしていたが、最近になってその理由がわかった。
彼女は最近紺野の側によくいる。きっと紺野に気があるんだろう。
そして、目の前にいるコイツも…

設楽がそんなことを考えながらピアノを弾いていたら
いつものようにペンを走らせながら話し掛けていたと思った小雪が
ペンを置いて目の前の窓から見える景色にボーっとしながら話し掛けてきた。
その様子を不思議に思いながらもピアノを弾いたまま返事をした。


「紺野先輩って彼女いるんですか?」

「なんで俺に聞くんだよ」

「友達でしょ?設楽先輩」

「だからって何でも知ってるわけないだろ」

「じゃ、設楽先輩は?」

「はぁ?」

「お願いがあるんです!」


いつになく真剣な表情の小雪にちょっと困惑しつつも話を聞く事にした。
小雪は例のグループデートの話を説明した。


「い・や・だ」

「え〜お願いしますー!」

「俺一人位いなくても大丈夫だろ。何でそんな大勢で行かなきゃならないんだ」

「それはごもっとも…私だって気は進まないけど…」

「じゃあいつもみたいに、ハッキリ断ればいいだろ」

「…………」


設楽がそこまで言うと小雪は突然無言になってしまった。
しばらく黙った後、急にパッといつも通りの明るさに戻って


「設楽先輩、無理言ってごめんなさい。今度はデートくらい自分で誘えーっていいます。
でも今回は…最初で最後。これから皆が来る前に紺野先輩も誘わないといけないんで
行きますね」

「おい!待て。紺野もおまえが誘うのか!?」

「はい…自分で誘うのはなんか恥ずかしいみたいで。2人デートしてるくせにおかしいですよね?」


小雪はそう言って苦笑いしながら音楽室を出て行った。
設楽は小雪の言葉にこのグループデートの真の意味がわかってしまった。
おそらく2人でデートしても中々縮まらない距離を何とかしたくて
友達の協力を得ようとしている。
確かに設楽は紺野から聞いていた。
最近よく一年の女子から遊びに誘われる、と。
最初は小雪の事かと思ったが彼女が紺野への気持ちを自覚していない以上
それは無いだろう。そこで前に帰りに割り込むように誘って来た人物を思い出した。
それはさっき設楽自身が考えていた人物だろうと。
そこまで考えた後、設楽は音楽室を後にした。
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