GS

□3話
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新しい学校の生活にも慣れ始めるこの時期。5月。最近の私は放課後、生徒会室に向かう前にある所に寄るのが日課になっていた。


「また、おまえか」

「邪魔ですか?」

「別に。居ても居なくても変わらない」


ピアノを弾いていた手を止めて入り口に居た私に、冷めた言葉をかける設楽先輩。最初のウチはこんな言葉にすらムッとしていたのに、今ではすっかり慣れてしまっていた。先輩は先輩で最初は心底嫌そうにしていたのに今では、勝手にしろ。と放っておいて、好きにピアノを弾いていた。
私はその横でいつも同じ事をしていた。
今日もいつも通りこの時間が過ぎると思っていたら不意に設楽先輩に話しかけられた。


「おまえ、いつも何してるんだ?」

「あぁ、宿題ですよ」

「ここで?」

「ダメですか?ここ、静かで集中出来るから早く終わるんです。今日は氷室先生の宿題があるから量が多いんですよね〜」

「・・・変なヤツ」


そう言いつつまた宿題に手をつけると、先輩もピアノへと向き直った。設楽先輩の"変なヤツ"は悪い意味じゃない。と言うことも最近気がついた。先輩は意外と優しい人らしい。だから少しの会話ならちゃんとしてくれる。


「設楽先輩」

「なんだ?」

「私、今度はね学に行くんですよ」

「興味ない」

「そうですか?自分の学校の制服着て、他校に行くのってなんか面白いと思うんだけどなー」

「何しに行くんだよ?」

「あぁ、なんか交流らしいですよ。生徒会の」

「ふぅん」


会話しつつもキチンとペンを走らせていたので今日のノルマは終了。パタパタと荷物を片付ける。


「なんだ、もうやめるのか?案外、根性ないんだな」

「?宿題なら終わりましたよ?」

「はぁ?!氷室先生の宿題もあったんだろ?」

「はい。でも全部終わりました」


あまりにも不思議そうに見る先輩に証拠として宿題を見せた。これと、これとーと説明していると


「おまえって実は秀才キャラなのか?勉強が趣味です!とか言っちゃうのか!?」

「秀才ではないですよ。勉強も好きじゃないから塾にはいかないし…」


う〜ん。と顎に人差し指を当てて考えながら話すと、それは俺に対するイヤミか?と睨まれた。さらに、俺の宿題もやってくれ。とかいつもピアノ聞かせてやってるだろ。とか意味不明の事を言う設楽先輩。


「習って無い事はわかりませんよ?先輩は勉強苦手なんですか?」

「…苦手って言ったか?」


きっと苦手なんだろうな、と思った。


「そう言うおまえは、苦手なモノないのか?」


そう聞かれた私は、聞かれて答える人はいないでしょ?…そのうちわかりますよ…と苦笑いで答えた。
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