総受けな帝人


□同一人物
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帝人君が泣いてる。



涙は出てないけど、泣いてる。



そりゃそうだ。



俺だって泣いてるから



今は俺に抱き着いてきて、
すがるように泣いてる。



でも、泣きながら呼ぶ名は俺のものじゃない。



俺によく似た、もとい俺の顔の原型となった彼の名。



「臨也さん…臨也さん…っ」


帝人君は俺に抱き着いて別の男の名を呼んだ。



俺はそれでも俺にすがりついて泣く帝人君が可愛いと思い抱きしめる。



――ああ不謹慎。



わかってる、わかってるけど。



可愛いと思ってしまう。










俺の身体のモデルとなった
折原臨也。



彼は数日前に亡くなった。



理由は簡単。
いつも通り悠々と街を歩いていたら突然襲撃を受けて
そのまま出血多量とかで死んじゃったらしい
新羅が言ってた。
途中でシズちゃんが助けにきたみたいだけど、
その時はすでに遅し。



皆臨也の事一人ぼっちとか言ってたけど、
以外と皆悲しんでた。



シズちゃんや波江さん、あの紀田くんですら、
あとは園原杏里ちゃんや、ドタチン、新羅、セルティ





そして――帝人くんも。











ある日帝人くんが俺を訪ねてきた。
そして、俺の顔を見るなり泣き出し、飛び付いてきた。



「どうしたの?」



そんなもの聞かなくてもわかる。
でも聞きたくなった、でも聞きたくない。



「……サイケさんに、会いたかった」



嘘だとすぐわかった。
でも、それを咎める気にはなれず「そっか」と頭を撫でた。



帝人くんは俺の背に腕を伸ばし、抱き締める。
俺もその小さな身体を抱き締める。










「気味が見てるのは"俺"じゃなくて"俺の外見"だろ?」



冷酷な声で帝人の耳元で囁く。
帝人くんはぴくりと肩を震わせた。



「それってさ まだ君が臨也くんを引きずってるって事だよね」


「……ッ」


「まるで首に恋した君の友人みたいな話だよね
偽物の恋だっていうのに…」


「違…ッ!」


「いいよいいよ 例え偽物でも俺は"しあわせ"だよ」


「……ッ」



きっと自嘲的な笑顔を浮かべているんだろう。
帝人くんが心配したような顔してる。



隠すように更に腕に力を込める。



今だけでいい。





お願い





臨也を















あんなヤツの事忘れて…!


























「ごめんなさい」


帝人くんは謝り俺から逃げた。












2010.09.07

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