臨也×静雄

□嘘つき恋愛
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「お前なんか大嫌いだ」


愛しの恋人に目の前で吐き出された言葉。


「……は?」


もちろんそんな言葉しか返せなくて、あたふたしていると、更なる言葉を振りかけてきた。


「別れる」















「いつまでも凹んでないでさっさと仕事しなさい」

「君にはわからないだろうね波江さん…」

「ええ 知りたくもないし知る必要もないわ」

「……」


ずーん、そんな言葉を背景に部屋の隅っこで体育座りしている上司が働かないから、
声をかけたが、逆効果らしく更に凹んだ。
ただでさえ扱いが面倒なやつなのに、今日はいつも以上に扱いが面倒くさい。

そんな日は携帯の誠二の写真を見て心を癒す。


「いいよね 波江さんはさ」


ついに僻みモードになってしまった。
あぁ、本当に面倒くさいわね。


「君にはわからないよね!このフラれた気分は!」

「ええ 知りたくもないし知る必要も…」

「それさっき聞いた!」


子供みたいに、泣きじゃくる臨也は携帯の画面とにらめっこしながら目に涙を浮かべていた。


「ううう…シズちゃん…シズちゃん…っうわぁ!?」


どうやら電話がかかってきたらしく、突然声をあげ、そのあと一度鼻をかむと、素早く電話に出る。
あぁ、やっとこれでまともに仕事できるわ。


「え?あ 四木さん?え?ちょ…待っ……うぁぁぁん…」


どうやらあのヤクザからの電話らしく、しかも切られたらしく更に泣き出した。
はぁ、面倒くさいわね…


「泣いている暇があるなら 私帰ってもいいからしら…?」


ため息混じりに吐き出した言葉は、きちんと臨也に届いたらしく、
一度ぴくりと反応し、わずかに頷くと更に膝を抱えた。


「……」


取り敢えず、おにぎりを二つ作って仕事場を出た。
















「……あのバカ…」


今朝方言った自分の発言に、少し自己嫌悪していた。
普段は2時間に1回程度くる電話も今日は一つもない。


「マジに受け止めたか…あのバカ…」

「どうした静雄 元気ないな」

「いや 何でもないっス…」

「そうか? っつてもいつもの恋人からの電話かかってこねぇな」

「……っ そうっスね…」

「……今日は帰ってもいいぞ?」


トムさんが苦笑混じりにそう言ってくれた。
なんだろうか、やっぱり俺元気ないのか…


「ありがとうございます…っ」


ぺこりと90度頭を下げ、さっさと踵を返して、あいつの事務所に向かった。


















「おにぎり…」


取り敢えず波江さんのデレた部分に感動しながら、ふたつのおにぎりを食べた。
俺好みの、薄味の塩おにぎり。
なんか、母親のようだ…
何故か涙が出た。


「シズちゃんにはフラれるし…波江には同情されるし…四木さんには仕事全てキャンセルされたし…皆今日は何なんだ…」


おにぎりを食べながら、泣いていると、不意にインターフォンがなった。
でも、どうせまた面倒なことだから無視しておにぎりを食べた。
指に付いた数粒を舐めて取っていると、メリと言う有り得ない音がした。


「いぃぃぃざぁぁぁやぁぁぁ…!!」


聞き覚えのある獣の咆哮。
俺は取り敢えず、急いで扉へと向かう。


「し シズちゃん!?」

「テメェ何信じこんでんだバカやろぉぉ…っ」


その手にはドアノブが潰されて握られていた。
そして、シズちゃんの可愛い目には涙が…


「…ばか…!」


でこぴんを食らった。
可愛い技だけど、シズちゃんが放つとそれは軽く脳震盪を起こすものだった。













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