臨也×静雄
□君が応えるその時まで、何度でも繰り返して言おう
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「シズちゃぁぁぁん!!」
背後約1メートルから背中に飛び付いてきた蟲を払おうと腕を振る。
蟲はひらりと躱すとにっこりと笑った。
「何なんだよ!ノミ蟲ィ!」
「何って時間無いから急いで来たのにその言い草?酷くない?」
「訳わかんねぇ!取り敢えず死ね!」
やだねと言ってまたひらりと拳を避ける。
その拳が蟲の後ろにあった標識に当たり、それがぐにゃりと曲がる。
あぁ、すまねぇコイツぁもう使えねぇから拝借するとするか。
ごきり、と曲がったそこを掴みコンクリートから引っこ抜く。
「相変わらずの馬鹿力だね〜」
けらけら笑う蟲に向かって標識を投げる。
勿論当たるはずもなくまた躱された。あぁくそ、うざってぇ!
「愛してる」
真剣な声色で言われれば、動きだって止まる。一瞬だけどな。
ぴくりと一瞬止まった俺を見て蟲は更に気を良くしたように何度も愛の言葉を口から発する。
「シズちゃんのそういうド低脳なところとか好き、あとちょっとえっちな内容からかうと顔真っ赤にするところとかすっごく可愛いよ! もしキスなんてしたらどうなっちゃうんだろうね! 気になるなぁ でも多分無理かな 俺にはもう時間がない きっともう間に合わないからね ねぇシズちゃんさ俺と付き合う気とか更々ないよね?うん、ないね、顔に書いてあるしね あーあ残念だな 新羅にどうにかしてもらえないかな?俺まだ嫌だし…はぁ これだからド低脳・鈍感なシズちゃんは困るなぁーさっさと気づいてくれれば俺はまだ幸せになれたのかも知れないのにー まぁこんな俺が幸せを望むのもおかしな話しかな? あはは楽しみだなぁ 俺が居なくなった世界はいったいどんな風に歪むのか、又は正しい歯車を取り戻すのか いやシズちゃんがいるから後者はありえないか ねぇシズちゃんはどう思う? 俺は無理だと思うんだっ シズちゃん俺じゃなくともキレるじゃん?やっぱ無理だね!」
「一人でペラペラペラペラうるせぇぇぇぇぇぇ!」
長ったらしい蟲の言葉に嫌気がさし、殴りかかる。
それでも減らず口を絶やさずに躱す。
「まったく…シズちゃんは分かってないな…」
溜め息混じりそう言うと、放たれた拳を躱し、腕の中に入り込み、顔を近づけてきた。近い気持ち悪い。
「…なっ!?」
「いつこれが言えなくなるか分からない身体だ 今言える愛してるを精一杯言ってるだけだよ」
ふふ、と笑うとすぐに離れて行った。
そして、すぐに咳き込む、その口を手で覆い、その手を見つめ自嘲的に笑うとバイバイと行ってその場から姿を消した。
俺は何をしていいのか分からなくなりただ呆然と突っ立っていた。
数分後、遠くで見ていた上司と後輩に呼びかけられるまで。
シズちゃん愛してる!世界一愛してる!誰よりも愛してる!
君が応えるその時まで俺は繰り返して言おう。愛してるをね。
でももう時間がない。
さよなら、お元気で
終わる世界に俺は呟き朽果てた。
「バイバイ」
***
臨也死ねたでした。
昔、病んでる(厨二病)時に友人に
「死にたいなんて言ってる暇があるなら愛しい人に愛してるを伝える方が大切だと思うんだ」
と言われ、かっけー!とときめいたのをなんとなーく思い出したから書いたら大変な事に…
ていうか、更新久しぶりすぎて泣けた…
2010.10.30.