その他


□酷く美しい終焉
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何故だかわからないけれど、一つだけ理解できる事がある。

しかし、それはとても理解したくないもので、されどそれを回避する手立てはない。





おれは――、























静雄は仕事帰りに露西亜寿司へ行き、その帰りに見慣れた黒髪の男が公園の片隅にある街灯の下に佇んでいるのを見つけた。

しかし、その黒髪の男はいつもの黒いコートなど着ておらず、それとは対照的な白いコートを着ていた。

頭にはピンク色のヘッドホンがのっかっており、そこからそれと同じ色のコードがのびていた。

彼は呆然と街灯を見上げ、どこか自嘲的に笑っていた。

「おい」

静雄はその男に近づき声をかけた。彼はそれに気がつき上を向いていた視線を一度自分の足元に落とし、それから静雄を一瞥した。

その顔は静雄がいつも殺したかだっている男の顔と瓜二つ、いや完全に同じ顔をしていた。

ただし、一つだけ違うのは瞳の色だ、殺したい方の男のソレはまるで血のような透明な赤だ。しかし目の前の男のソレは透き通る艶やかな桃色だった。

彼はその大きな桃色の瞳を精一杯見開き、静雄を見た。

静雄は殺したい男の顔と同じだけれど、別人である彼に戸惑いの色が隠せなかった。

彼が静雄の登場に驚き、それからすぐにいつもの彼の落ち着いた穏やかな表情へと変わり、戸惑う静雄に声をかけた。

「まさか…ここでシズちゃんに会えるなんて…思わなかったよ!」

にこり、と微笑みながら言う彼。そしてシズちゃんという呼び方。静雄は徐々に混乱してきた。それを悟った彼が

「直接会うのは初めてだよ?おれはサイケデリック 長い名前嫌いだからさサイケって呼んで、」

ね☆とウインクし人差し指を口元にやり可愛い仕草をする。しかし静雄にとってそれはイラっとしたようで口元を一度ヒクつかせ、こめかみに青筋が浮いた。

それを見た男――サイケはパッと明るい表情になり、静雄を宥めるように

「おれは臨也くんとは別物だよ」

静雄が訊きたい事を悟り先に答えを言う。静雄は一瞬何かと思ったがいつもの彼の穏やかな顔になり、そうかとだけ言った。

「けどおれは臨也とは違うけど同じ」

「は?」

サイケが矛盾を口にしたために静雄の思考は再び混乱の中に戻ってしまった。

「大同小異ってわかる?」

「ん あぁ」

「つまりそういうこと」

「ワケわかんねぇよ」

「だ か ら 大体は同じだけど事細かいトコロは違うって事! わかった?」

「ん まぁなんとなくは…」

サイケはふんと鼻をならしワザとらしく腕大きくふり腰にあてた。

「しかしよ 細かく違うってどういう事だ?」

「えーまぁそれは話せば長くなるんだよ 例えば染色体とか細胞数とかが――」

「ああもういい」

「だろうね」

静雄は頭を抑えながらため息を吐き、サイケは呆れた笑顔のまま息を吐いた。

静雄はタバコを取り出しつつ、サイケに再び質問をした。

「ところでお前とノミ蟲はどういう関係なんだ?」

「ノミ蟲って……臨也くん? 臨也くんとは主従というかペットと飼い主みたいなモノかな」

「ふーん ってそれどういう事だよ…!?」

タバコに火を点け一息吸ったところでサイケが言い、それに動揺した静雄は噎せた。

「…シズちゃん大丈夫?」

「ゲホッゲホッ…いや お前こそどういうことだよ…」

サイケは静雄の背を擦りながら声をかける、静雄は息を整えた。

「どうって…別にただの人間とそのプログラムだよ?」

「……プログラム?」

「そう プログラム おれは単なるパソコンのソフトに過ぎない…だからバグだって起こる…」

自嘲的に微笑むサイケを見て、静雄はなんとも言えない表情をし、サイケの頭を撫でた。

「…シズちゃん?」

「なんか…悲しそうだったからさ…」

「同情?」

「いや…その…」

静雄は頭を撫でていた手を引っ込めた、しかしすぐにその手はサイケに掴まれた。

「……?」

「いいよ 別に ていうか嬉しかった」

「…………っ」

「ねぇシズちゃん おれとお友達になってよ!」

サイケは掴んだ手に擦り寄りながら言った。その行為に顔を赤くしながら、

「ンだよ 俺らダチじゃなかったのかよ」

と笑った。







サイケデリック臨也!
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