飼育日記


□05
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平和且つ平凡且つ日常的な学校も既に放課後。

正臣や園原さん達と別れ、家につく5分前。
非日常な存在の彼女に出会った。

『帝人!』

「ああ セルティさん」

池袋の都市伝説、首なしライダーの彼女がそこで待ち伏せをするかのようにバイクを止めていた。

僕の姿を確認するとバイクを押し片手を振ってきた。
僕もその手を振り返した。

『あのさ 君に聞きたい事があって待ってたんだよ』

「聞きたい事、ですか?」

『ああ、君なら気づいてるかな――』

セルティさんが僕なんかに聞きたい事って何だろうか、ハテナを頭上に浮かべていると文字を素早く入力し、見してきた。


『最近 静雄と臨也を見かけたか?』


見かけたとも、二匹ともウチに居ます。口が動き、声帯が揺れた。
が、僕はセルティさんと新羅さんが恋人同士である事を思いだし、それは言うわけにはいかないと判断し口を閉じた。

「見てないですね」

声が震えてしまってないか、目が泳いでしまっていないか、少し不安だったが、セルティさんはそうかと打ち込むとどこか寂しげにヘルメットを傾けた。

「すみません…」

『いや、いい 悪かったな』

「い、いえ でも確かにあの二人見かけませんね」

『あぁ 新羅もそわそわしていたからな』

それは多分解剖したいんですよ と言いそうになったがまた口を閉じる。

セルティさんが突然鞄に触れたのでびくっと身体が跳ねた。
セルティさんの指には一本の金色の糸…髪が絡まっていた。

「あ、あの…セルティさん?」

『これは帝人のじゃないな 金髪…静雄か?』

今朝、鞄を枕に眠っていた静雄さんを思い出し、全身から妙な汗が出てきた。

『そんなわけないか』

セルティさんはからかうような指さばきでキーを叩くと、僅かに肩が動く。
どうやら笑っているようだ。

「セルティさん?」

『すまん 何でもない』

セルティさんはふふ、と笑いたげに(実際笑っているのかもしれない)再び肩を揺らした。

『もし二人を見かけたら連絡がほしい 良いか?』

「あ、はい 分かりました」

取り敢えず不自然じゃないように振る舞ったら案外大丈夫だった。

セルティさんはじゃあと入力し、僕がそれを確認するとバイクに跨がり馬の嘶きと共に去って行った。




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