飼育日記
□04
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朝、学校へ行き教科書を取り出すために鞄を開けてみると、鞄の中で黒と金が犇めいていた。
黒が色白の肌の顔をこちらに向けた瞬間、自分でも感心するほどのスピードで鞄を閉め、園原さんと、何故かクラスにいる正臣に早退すると言い、クラスを出た、その間も臨也さんは鞄の中でうーうー言ってたので鞄越しに殴った。
やっとの想いで帰宅し、鞄を開けると口を3の形にした臨也さんが渋々といった感じに出てきた。
その後に静雄さんが伏せ目がちに出てきた。
とりあえず、押し入れに臨也さんを閉じ込め、話の解りそうな静雄さんを正座させ、僕もその正面に正座し話を始めた。
「何で止めなかったんですか」
「…」
「静雄さん」
「……」
「新羅さんに連絡してもいいんですよ?別に僕は困りませんし」
「…っ! えと…」
静雄さんは目を伏せそれを左右に泳がせ、あーとかうーとか唸って、やっとこちらを見て、
「竜ヶ峰と離れたくなかった…」
涙声と顔を真っ赤にして言った。…って、え?
「な、何で…」
「……っ」
「……」
「竜ヶ峰…っ」
ちょんっと跳躍し僕の胸に飛び込んできた、生憎小さくなった静雄さんの力ごときじゃ僕は倒れることもなくそのまま座っていた。
そのまま小ささに比例し短くなった腕を精一杯伸ばし胸元の服を寄せた。
「し…静雄さん?」
「離れ…るな…」
ぎゅうと抱きしめられる。
「静雄さん」
「……っ」
ぎゅうっと更に力が加わる。僕もその小さな背中にそっと左手を回し右手で頭を撫でる。
すると、すりすりと擦り寄ってきた。可愛い…犬みたい…あ、犬なんだっけ…?
パタパタと尻尾を振り擦り寄ってくる静雄さんの脇に手を回しそのまま持ち上げた。軽い。
「……っ?!」
「静雄さん 寂しいのは解ります 」
「じゃ…じゃあ?!」
「でも 僕にも僕のやることがあるんです」
「……あ…」
静雄さんは一度俯き、すぐ顔をあげて
「悪かった…」
と小さく涙声で言われた、何故だかこちらが悪いことしたような錯覚に陥る。
すると、ガタガタと押し入れの戸が暴れ、中から叫び声とも取れる声がした。
静雄さんを降ろし、四つん這いの状態で開けてみると、中から凄い勢いで黒猫、臨也さんが飛び出してきた。
「みかどくんのばかーっ」
泣いてた、完全に。
「なっ 何で泣いてるんですかーっ!?」
「ばかばかばかばかばかぁ!」
「あんまりバカバカ言わないでくださいっ」
「ゔー…」
臨也さんはさっきの静雄さんみたいに涙で濡れた頬を胸に押し付けて抱き締めてきる。
静雄さんが臨也さんを引き剥がそうとするけど、静雄さんの頭を撫でてあげるとピタッと動きを止め嬉しそうに目を細めた。
そのまま左手で臨也さんの頭をポンポンと撫で、右手で静雄さんの頭を撫でている。
臨也さんが半泣きになりそのまま胸で寝てしまった、静雄さんも撫でられながら恍惚とした表情になり尻尾をパタつかせていた。
わんわんにゃーっ!