Novel

□Human'shart
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2.envy me

『どうしていつもうまくいかないの?』
くやしくて、くやしくて自然と涙が溢れてくる。ぽろぽろぽろ…。
「ふえっ…。」
微かに嗚咽がもれる。
「うっ、ひっく…。」
涙がどんどん頬を滑り落ちて地面を濡らしていく。
「おいっ!」
びくっ。
ガサガサガサ
茂みを掻き分けてだんだんと誰かが近付いてくる。
おそるおそる後ろを振り向くと…君がいた。
「なっ、何よ!来ないで。あっちに行って!!!」
私は、泣き顔を見られないように顔をうずめる。それを聞いて君は少しムッとしたようで
「なっ、何だよそれ!人がせっかく…おい?」
かたかたっ何故だか分からないけど体が小刻みに震える。
『たかが、君の声を聞いただけなのに…。』
ふわっ。
ふと、何かに包まれた感じがする。
少し顔を上げてみると…抱き締められていた。
だが、不覚にも私はそう気付くのに数分かかった。
かあぁぁ…。
「えっ、ちょ。」
私の言葉は君の言葉に書き消される。
「何泣いてるんだよ。」
「………。」
「なぁ、マジでなにがあったんだよ!?」
「………。」
はぁ。
君の深い溜め息がもれる。
「だって…。」
「んっ?」
「だって、あの子があんたの事…」
君の腕の力が少しこもる。そして
「そんな事気にしてたのか。」と呑気にそう言う。
「なっ…。」
私は、かっとなって君を振り返る。
君との距離は、数センチ。
こつん。
君は、おでこを私のおでこに合わせる。
「大丈夫だよ。俺は、おまえしかこんな事しないんだから…。」
「えっ…。」といきなり唇をふさがれた。
その途端、さっきまでの気持ちがすうっと消えてしまった。
そう、それはとても些細な事だったように…。
ねぇ、どうしても君のそばに女の子がいるのが嫌なんだ。いつもいつも、こんな気持ちがぐるぐると回っている。
あぁ…なんて醜いんだろう。
たまには、君も私に嫉妬してよ。
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