story

□フローライト
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青い空、白い雲。
開放された窓からは強い日差しとそれを包み込むような爽やかな風が入ってくる。

「葵!」

窓から広がるこの日を待ちわびていたかのような景色を眼下に見下ろす。声の主はすぐに見つかった。

「10分後に下駄箱集合ね!」

テニスラケットを背負い、約束の時間をとっくにオーバーしているにもかかわらず悪びれた様子もなく言い放つ親友に思わず文句を言いそうになるが、今日は気分がいいのでやめておく。
自分のことを棚に上げて「遅れるなよ!」なんて言う千晴を軽くあしらうと、同じく千晴を待っていた律とともに教室をあとにした。


高校1年の夏。

小・中・高一貫の女子校に通っている私たちには、中学受験の実施に伴い新たな学友が増え校舎こそ変わったものの、小学校からの友人、先輩後輩、通学路に一切の変化もない。制服でさえ伝統重視による微かな変化のみで、唯一の変化はスカート丈にしつこくなくなってきたことくらい。
何の変化もないまま時間だけが過ぎていったこの9年。気づけば私たちの前には“大学”という大きな、そして未知なる世界への扉があり、それは同時に私たちの楽しい学生生活の終わりを意味していた。


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