無双

□EPISODE 5.5
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師宗の試合数が五十を越え、それと同数の負けが積み重なった頃に、帰宅の運びとなった。駄々をこねる師宗を宥め、なのはとフェイトはバニングス家のリムジンに乗り込み、拠点(ハラオウン家)まで送られた。

師宗は普通に走りである。


「んじゃ、また明日ね」

「バイバイ、師宗さん、フェイトちゃん、なのはちゃん」

「あ゛あ゛、じゃあなあ」

「はいばーい」

「また明日」


アリサとすずかを見送り、マンションの一室、管理局臨時作戦本部――実質、ハラオウン家に、師宗となのははお邪魔していた。

フェイトもこの家に住んでいる。戸籍はあるとはいえ、子供である彼女が地球で過ごすには、これがベストの形であった。

戸籍は師宗がアースラスタッフ全員分を用意していた。保険証まで作る徹底振り。馬鹿である。

ちなみに、作戦本部を師宗の家に置く、という案もあったにはあったが、何分、山の奥。立地条件が悪すぎた。


「ただいまー」

「おじゃましまーす」

「あれ?今日はエイミィさん達いないの?」


ハラオウン家と、エイミィ、フェイト(+アルフ)というのが、この部屋を使用しているメンバーである。ルームシェアリングといった風な関係。だが、ルームメイトの姿はない。


「あっ、うん。リンディ提督とクロノは本局で、エイミィはアレックスたちの所に行くって」


闇の書を追っている今、管理局次元航行部隊提督であるリンディや執務官のクロノは暇ではない。

なのはやフェイトには出来ないような組織的なアプローチを彼女たちはかけているのだ。


「ユーノとアルフは、大丈夫かな……?」

「うん……それに、レイジングハートも……」

「信じてやれ。てめえの相棒だろぉが」


中破したレイジングハートは、未だになのはの下に戻っていない。砕けた、不屈。

それは、なのはの心に影を落としていた。


「はぁ〜。早く魔力が戻らないかなぁ……。前にレイジングハートと練習してた新魔法、完成間近だったから」

「へえ?」

「そうなんだ」

「うん。レイジングハートもいろいろ考えてくれるから、頑張らないとって」


そうして、なのはとレイジングハートはやってきた。師宗が口を出すこともあったが、それはあくまでアドバイスや戦い方の基礎のようなもので、主体はその二人(一人と一機)であった。

ここ半年間は、師宗がいなかったので、より二人は絆を深めていた。


「良いね、レイジングハートは世話焼きさんで。バルディッシュは、無口な子だから……。なのに無茶するし、大丈夫?ってきいてもイエッサー、ばっかりだし」

「男じゃねえか」


フェイトの手にも、バルディッシュはない。メンテナンスに時間がかかっているらしかった。

レイジングハートと同じくらい時間がかかっているのは、引っ掛かると言えば、引っ掛かるが。


「あはは。バルディッシュはそうだよね」

「早く良くなって、戻って来てくれるといいんだけど」

「うん……。ねぇ、フェイトちゃん、……。わたしたち、もっと強くなろうね」

「なのは……?」

「師宗さんに頼らない。ユーノくんやアルフさんを不安にさせない……リンディさんやクロノくん、エイミィさんたちにも心配かけない。レイジングハートとバルディッシュに無茶なんかさせなくても良いくらい、私たちが強く」


その瞳には、光が宿っていた。

不屈の心は、その胸に。


「……うん」

「師宗さん、私たち、強く、なれるよね!」

「望めば」


にいぃい、と、師宗は笑う。


「てめえらは可能性だ。無限大の可能性だ。俺を満たすことが出来るかもしれねえし、満たせねえかもしれねえ。可能性は等価だあ。ならば望め。望んで、引き寄せろ。可能性を、だ。自分から行くんじゃねえ。可能性からやってこさせろ。見せてみろ、お前らを、その価値を」

「「はいっ!」」

「なら、やるぞ?」


さて。強くなる、と言えども、今のなのはに出来ることは少ない。魔力は戻りかけているが、相棒がいない限り、魔法の練習というのは難しい。

管理局スタンダートのストレージデバイスがあるにはあるが、なのはには合わない。というのも、感覚で魔法を使うなのはには、インテリジェントデバイスの人工知能のサポートが必須なのである。

体を鍛えるというものあるが、それでは効果が出るまでが遅すぎる。目下、ヴォルケンリッターとの対決しなければならない以上、即効性のあるものが望ましいのだが、彼我との力量差はそうそう縮められるものではない。

その気になれば、出来ないこともないが、代償は大きい。生死のリスクは付き纏うし、寿命も確実に縮む。それは、止められている。

ならば、どうするか。


「意識を、集中させろ」




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