無双

□EPISODE 5.25
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 なのはの友達フェイトが転入してきて一週間。

 学校そのものが初体験なフェイトはなんだか色々と危なっかしいたらなくて、なのはやすずか共々、なんだかんだで目が離せない、あたし、アリサ・バニングスだったりします。

 あたしとなのは、すずかの三人は一年生の頃からの友達同士。初めは喧嘩から入った間柄で、今も時々喧嘩は(主にあたしとなのはが)するけど、三人でずっと仲良くやってきた。

 だから、なのはが新しく作った友達がその中に入ってくるって聞いて、本当はすこーし不安もあったんだけど、ちょっと内気でおっとりしてるけど自分の考えははっきり言うし、なんだかニコニコよく笑う子だし……まあ、なのはがこの子を好きになったのも納得なわけで。

 クラスメイトとも上手くやれてるし、当面、問題はなさそうだし。

 それになにかワケありっていうのも分かる。【あの】師宗さんに連れてこられたってことだけで、複雑な人生を送ってきたんだろうなあ、って思うには十分。

 あとは、なのはもそれに一枚噛んでるってことは確かかしら。一時期アイツ、調子おかしかったし。



魔法少女リリカルなのは
A'S

無 双
- EPISODE 5.25 -
TITLE:
- SOME GIRLS ONE DAY -


 昼休み。仲のいいクラスメイトと各々組み合い、お弁当を食べる。お弁当のおかずをつつきあったりするのは、ご愛嬌だろう。そんなときに割りを食うのはどんくさい子と決まっているのだが。


「そういえばフェイトちゃん。宿題ってちゃんとやってる?」

「うん。ちょっと難しいけどなんとかやってるよ」


 なのは、フェイト、アリサ、すずか。ここ数日ですっかりお馴染みになったグループでは、おかずの取り合いなんてことはなかった。そういった騒ぎを端から見るのが、妙に大人びた彼女達のスタンスである。


「頑張ってね」

「うん。ありがとう」

「でも、アリサはすごいよね。英語も日本語も完璧なんて」

「Perfect bilingual!」


 フェイトの言葉に、自信満々でアリサはそう返した。言うだけの事はあり、滑らかでナチュラルな発音だった。


「「「わー」」」


 そもそも、ただでさえ父が英語圏産まれなのに加えて、将来バニングス家の跡継ぎになるであろうアリサには当然、グローバルに対応出来るように英語を修めさせている。

 アリサは日本語で喋られることは英語で言えるし、その逆もまたしかり。英語と日本語は完璧であり、他の国の言語も日常会話が出来るくらいのものがいくつかある。

 しかし、アリサにはそれとは別に、不満に――いや、納得しえないところがあるらしい。


「で、も! フェイトの理数系の成績についてはビミョーに納得いかないのよね。なのはもだけど! なんで二人して理数系だけが抜群にいいのっ!?」


 アリサのいう成績。分かりやすく表に纏めるとこうなる。

文系
アリサ 学年一位(満点)
すずか 中の上
なのは 中の下
フェイト 残念

理系
なのは 学年一位(満点)
フェイト 学年一位(満点)
アリサ 学年一位(満点)
すずか 中の中


 今までは理数系ではアリサとなのはで双璧を築いていたのだが、しかし、その関係にフェイトが颯爽と登場したことになる。割り込みとも言えるが、ともかく、その勝ち気な性格と、バニングス家の令嬢という自負などから、アリサにしてみれば、いい事態とは言えない。というか、はっきり言ってしまえば、気に食わない。

 それが妬みややっかみと言ったものにならないのは、本人のサバサバした気質故。


「え」

「ええと、なんでだろう……?」


 そんなことを、言われましても。というのが、二人の意見である。

 当て付けに近いし。ジャイアンじゃないんだから。


「あー、フェイトちゃんウチのお姉ちゃんの数学の問題も解けてたから、私より上かもー」

「そんなことは聞いてないっ!」


 その美由希は助かると同時に凹んでいた。小学生に負ける高校生。嫌な構図である。

 恭也はその様子を呆れと感心半々の目でみていた。

 ともかく。フェイトの能力の高さを示すエピソードの一つである。極端な話、公式さえ分かっていれば、解けてしまえるという性質を持っている数学とはいえども、行き過ぎの域だろう。

 それに。高校生の問題を解いたからといって、高校生と同等の成績を持っていると言うのは早とちりというもの。実際はそれ以上なのかもしれないのだ。


「負けてられないわ! 今度は塾のテストで勝負よ、フェイト!」

「いいよ」

「フェイトちゃん、大丈夫? アリサちゃん負けず嫌いだよ? とっても」


 二つ返事で請け負ってしまったフェイトになのはは注意をする。今までアリサに絡まれて(という表現が正しいだろう)いた身からしてみれば安請け合いはしない方がいいというのが、なのはの意見である。

 例え安請け合いしなくても、厄介なことに変わりないという現実があったりもするが。


「うん! 面白そうかな」

「そーそー。学校のテストなんて百点は当たり前で面白くないもんねー」

「あー、アリサちゃん、それ絶対おかしいから。ほら、師宗さんとか……師宗さんとか」


 大事じゃないけど二回言いました。

 本当に大事でないけれど。


「師宗さんは数えなくていいわよ」

「あはは……」




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