ステキな作品

□すき、すき!だいすき!!
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「好きだよ、宍戸くん」

「あ〜はいはい、分かった分かった」

「またそんな邪険にする。本当なんだってば」





こんな会話がもう日常茶飯事になってしまった。
会えば毎回のように告白してるんだけど、どうも信じてくれてないというか、真剣に考えてくれてないというか。
どうすれば信じてくれるの?
言葉で言ってもダメなら何をすればいいの?














すき、すき!だいすき!!















宍戸くんが私の会社に来たのは単なる偶然。
私の会社がリースしてるコピー機のメンテナンスで訪れただけだし、それまでの担当の人が突然会社を辞めてしまったようで、急遽その時、宍戸くんが私の会社の担当になったらしい。
私にはラッキーだったけど。
名刺を差し出す宍戸くんを思わず見つめてしまって、宍戸くんの「何か?」という問いかけに我に返って思わず下を向いてしまった。
恥ずかしすぎ!
変な女と思われなかったかな。
これまでの担当の人も悪い人じゃなかったけど、おじさんだったんだもん。
いやいや、おじいさんに近かったかもしれない。
でも宍戸くんは私とそう変わらない年みたいだし、いい男だし、言うことなし!
ちょっときつめの目が堪らなかった!
あの目に見つめられたらきっと私は悶絶するだろう・・・・その時私はそう思ったし、それは今でも同じ。
ぼーっと見惚れてしまったよ、ほんと。
どうやったらお近づきになれるんだろうか、この際手段なんて何でもいいし!
















そう思ってたら、救世主が現れて・・・・・やっぱツイてる!
今月の私の星座占い、1位だったもんね!
















親しげに言葉を交わす同期の忍足侑士に藁にも縋る思いで私の思いを告げて、そして協力を頼んだ。
忍足くんは怪訝な顔と何か呆けたような顔を私に晒した。
こんな表情が崩れた忍足くんを見たのは実は初めてだったりして。
初めは私の恋路の協力を拒んでいた忍足くんだったけど、今では一番の協力者となってくれている。
と言うよりも無理やりさせているという方が正しい感じだけど。
それでもいつも「何で宍戸なん?」って聞かれる。
こればっかりは私にも分からないんだよね。
一瞬で恋に落ちたんだもん、理由なんてないよ。

「こんなええ男が目の前にいつもおるっちゅうのにな〜」
「宍戸くんじゃないからね〜。私は宍戸くんがいいの」
「お前の目は節穴やっちゅうことやな」

そんな軽口を言い合いながらも私に情報をくれたり、一緒に飲みに行く算段を取りつけてくれたりと、今では本当になくてはならない存在だ。






今の所、宍戸くんには彼女はいない。
大学時代から続いてた彼女がいたらしいけど、何でか別れたらしい。
私なら絶対に離さないけどね。
もしも宍戸くんが結婚していたりしても、それで私が諦めていたかどうかは不明だ。
そうだったとしても不倫でも構わないと思うくらいに好きなんだもん。






宍戸くんと忍足くんは中学からの同級生だ。
部活も一緒にしていたというからある程度は親しい仲らしい。
何と言っても思春期を一緒に過ごしたんだから。
氷帝学園出身と聞いて、ちょっとだけ引いた。
だって氷帝っていえば、東京だけじゃなくて全国的に有名なお金持ち学校だよ。
おぼっちゃまとかだったら嫌だな、って思った。
宍戸くんが六畳、いや四畳半一間のボロアパートに住んでたって構わないけど、でもおぼっちゃまだけは何か嫌だ。
そう言うと忍足くんは「宍戸はどっちかと言えば庶民やった方や」という言葉を聞いてほっとしたのも事実だ。
宍戸くんのことを好きになって、それ以来よく話すようになった忍足くんの印象は私の中でガラリと変わった。
もっとこう・・・・クールな人だと思ってた。
黙ってたらまあ、カッコいい方の部類に入るとは思うけど、実際に話してみるとどっちかと言えば三枚目だった。
新たな発見だった。
そんなことはどうでもいいけど。
私には宍戸くんが最上級に大事な人だから。















今日も今日とて私は宍戸くんとおまけの忍足くんと共に居酒屋で飲んでいる。
飲むとどうしても私の口説きは拍車がかかるようで、最近では宍戸くんにもちょっと警戒されている。
警戒というか、邪険にされているというか、そんな感じで真剣に取り合ってくれない。
酔ってくるともっとベタベタしたいって思っちゃうし、ラブラブしたいって思ってしまうんだもん。
そんな私を忍足くんは奇異の目で見る。

「何でそないに宍戸がええんやろか、頓田は」

最近の忍足くんの口癖がまたも始まって、冒頭に戻ってしまうわけだ。







この前一緒に飲んだ時、切羽詰まってた私は宍戸くんの唇を奪ってしまった。
ネクタイを引き寄せ、そしてよろけた拍子に強引に宍戸くんの唇に触れるだけのキスをした。
その時、宍戸くんから女からそんなことするなと思い切り怒鳴られ、忍足くんには呆れ返られてしまった。
そして忍足くんは「宍戸にはああいう手は逆効果や。俺やったら大歓迎やけどな」という言葉を頂戴したのだ。
それから宍戸くんには一切触れてない。





だけど!





もう限界に到達しそうになってるんですが、私の気持ち。
このままじゃいつか私は宍戸くんに今まで以上に、もっと強引に迫ってしまうような気がする。












「ねえ、何でそんなに信じてくれないの?」
「あ?毎回毎回同じこと繰り返されたら信じるどころじゃねぇだろ?」
「だって、言わないと分かってもらえないじゃない」
「それにしてもよ。限度っちゅうもんがあるだろうが」
「なら、黙ればいいの?何でもするよ、私。お買い得だと思うけどな。試しに付き合ってよ」

そんな私たちの会話を忍足くんは黙って聞いていて、口を挟まないことに決めているようだ。
どうしたら私の真剣な気持ち、分かってもらえるの?
誰か教えてよ。
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