ステキな作品

□聖夜の約束
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「もう、終わりにしたいんだ。」

 
 「え?」


 それは好きだった恋人からの突然の言葉であった。
 しかも、一ヶ月後にはクリスマスが控えているという間の悪さ。




     聖夜の約束





 ああ、もう腹が立つ・・・!
 旅行会社に勤める頓田恭子は、昨夜の恋人の言動を思い出してイライラしていた。突然の別れは、予期していなかった事で、更に『好きな人が出来た』と理由を言われ、もう悲しいという気持ちを通りこして、怒りになっていた。


 「ちょっと、恭子、何荒れてるの?」
 同僚の友達が客の切れた時に、恭子に話し掛けた。
 「ちょっとね。」
 「ちょっとね、じゃないわよ。私達は窓口業務なのよ? そんな仏頂面で接客してちゃ、上司から叱られるわよ?」
 「・・・分かってるわよ・・・。ちょっと化粧室に行って来る。」


 ああもう! 全てアイツのせいよ! 
 恭子は化粧室の鏡の前で笑顔を作ってみる。
 目が笑ってない・・・。
 そう、振られて笑顔なんて出来る心境じゃないのだ。それでも何とか気持ちを入れ替えようと、両頬をパシパシと叩いた。
 「・・・よし!」
 今は仕事仕事! とイラつく気持ちを抑えて恭子は化粧室を出た。


 ドン!


 「きゃっ!」
 化粧室を出た所で何かにぶつかり、恭子は思い切り尻餅をついた。
 「悪い、悪い、大丈夫けぇ?」
 そう言って手を差し伸べてきたのは、恭子の同僚の仁王雅治であった。
 仁王は恭子を引っ張り上げ、「すまんかったのう。」と謝った。
 「ううん、気にして無いから。これからは気を付けてよね!」
 少しイライラを仁王にぶつけ、恭子は立ち去ろうとした。


 「待ちんしゃい。」

 
 仁王が恭子の手を掴んだ。
 「何?」
 「目が赤い・・・どうしたんじゃ?」
 「え?」
 恭子は咄嗟に目に触れた。
 「泣いとったんけぇ?」
 「な、何よ、仁王・・・!」
 「頓田の事を心配しとるんじゃよ。」
 「心配!? 何で?」
 「そう聞かれると困るんじゃが・・・。」


 「・・・ねぇ、心配してくれるんなら、今晩付き合ってよ。お酒が飲みたいの。」
 「OKじゃよ。」
 恭子はどうしようもないイラつく気持ちを発散させる為に、仁王を突き合わせる事にしたのであった。・・・一人でお酒を飲むのは嫌だったからである。


 仕事が終わると、恭子は待ち合わせにしたバーに向かった。思い切り飲んで、思い切り愚痴を言ってやろう、そうもくろんでいた。
 バーに着くと既に仁王が居て、カウンターから恭子に手を振った。  
 「ごめん、待った?」
 「俺も今来たところじゃけぇ。で? 何を飲むんじゃ?」
 仁王が恭子にメニューを見せた。
 「私は・・・ホワイトミモザ。」
 「頓田はカクテルが好きなんけぇ? じゃあ俺は・・・よう分からんからシャンパンにしとくか・・・。」


 二人の飲み物が目の前に出されると、乾杯をした。
 ジャズが流れる中、恭子はカクテルを一気に飲み干した。
 「頓田、お前さん、良い飲みっぷりじゃのう。」
 「そう?」
 「で? 何かあったんじゃ?」
 「は?」
 恭子はドキンとした。まさか仁王の方から話を振られるとは思ってもみなかったからである。


 「何って・・・ただ振られただけよ・・・。」
 恭子の目に涙が浮かんだが、それを手で拭った。
 自分から『振られた』事実を認める台詞を口にした途端、無性に悲しくなったのだ。
 「頓田を振るとは、その男は目が無い奴じゃ。」
 「・・・・・・。」
 「頓田は、頓田のままが一番良いと思うぜよ?」
 「・・・仁王・・・。」


 仁王の言葉がストンと恭子の心の中に落ちた。在るがままの自分で良い・・・その言葉は、今一番聞きたい言葉であった。無理をしなくて良い・・・そう思うと涙が頬を伝った。
 その涙を仁王が指で拭う。
 「泣きんしゃい。」
 「仁王・・・。」
 恭子は声を殺して泣いた。溢れる涙がハンカチを潤わし、肩が微かに震える。
 仁王は、ただ黙って恭子の肩をそっと抱いた。


 「・・・頓田、上に行くけぇ?」


 このバーはホテルの地下一階にあった。仁王のこの言葉はホテルに行くか、という誘いである事は恭子にも分かった。そして、今、人肌が恋しく思う恭子にとって、断わる理由など無かった。


 「・・・ん・・・。」
 仁王が恭子の唇に優しくキスをする。上唇、下唇にそれぞれチュッと音を立ててキスをし、そして口内に舌を侵入させた。
 絡み合うお互いの舌が、激しくお互いを求め合う。
 「頓田・・・いや・・・恭子・・・俺は、お前さんが欲しい・・・。」
 「・・・雅治・・・きて・・・。」
 

 二人は裸になり、抱き合った。体温が交差する。
 「綺麗な肌じゃ。」
 仁王はそう言い、舌を恭子の胸に這わせた。ピクンと恭子の体が反応し、恭子は仁王の頭を自分の胸に抱き込んだ。
 「良い匂いじゃ、もっと欲しいぜよ・・・。」
 優しく仁王が恭子の胸を揉み、胸の先端を口に含んだ。
 「あ・・・ん。」
 慣れているかの様に、舌で恭子の胸の先端を転がす。
 「んん! あ・・・はぁ、はぁ・・・。」
 「俺で感じとるんか? 嬉しいぜよ。」
 

 恭子の大腿部には、仁王の硬くなったペニスが当たり、欲情した。仁王を体が欲していたのだ。
 仁王の指が十分に潤った恭子の秘部に触れ、中を愛撫する。潤っていた秘部が更に蜜を溢れされ、恭子は我慢が出来なくなっていた。
 それは仁王も一緒で、固くそそり立つペニスを恭子の秘部に当てがい、ゆっくりと腰を下ろした。
 「あぁん!」
 「恭子の中・・・熱いぜよ・・・! はぁ・・・はぁ・・・動くけぇ・・・。」
 仁王が腰を動かし始めた。


 二人の接合部からは、仁王のモノが出入りする度にグチャグチャといやらしい音がし、二人はより一層お互いを求め合った。
 「くっ・・・恭子の中、気持ち良い良いけぇ・・・もうイキそうじゃ・・・!」
 「私も気持ち良い・・・! 良いよ、イッて・・・!」
 その恭子の言葉を聞くや、仁王は激しく腰を動かし、恭子の奥を突き上げた。
 その果てに仁王は達し、恭子も頂点に昇り詰めた。
 
 
 仁王は優しく恭子を抱き締め、キスし、「最高じゃったぜよ。」と囁いた。恭子も「雅治だって最高だったよ?」と囁き返す。
 思わず二人に笑いが込み上げた。


 幸せ・・・そういう言葉が恭子の心を占めた。


 
 翌日、旅行会社で仁王と恭子は顔を合わせるが、恭子は何事も無かった様に振舞った。仁王もいつもと変わらず挨拶を交わす。
 いつもの日常が始まった・・・
 もう恭子には、振られた事など遠い記憶の扉にしまわれていて、イライラも無くなっていた。悲しみも・・・。
 ただ、あの夜の事だけは、恭子は忘れる事が出来なかった。忘れ様とすればする程、仁王の顔が浮かび、気付くと気持ちは・・・求めていた。
 

 
 クリスマスがやってきた。
 街はきらびやかに飾られ、カップルがいちゃつくクリスマス。
 そんな街の中を、恭子は彷徨っていた。家に居ても何だか居心地が良く無かったからである。
 

 はぁ・・・周りは幸せ一杯だなぁ・・・


 今、恭子の目の前には大きなクリスマスツリーがある。そこは本当なら恋人と来たかった場所。無意識に来てしまったのである。
 

 「見つけたぜよ。」

 
 「え?」


 恭子が驚いて声の方を振り向くと、そこには仁王が居た。
 「な・・・んで・・・?」
 恭子の鼓動が速くなる。
 「ここは、お前さんが来たかった場所じゃろ?」
 「何で知ってるの!?」
 「偶然聞いたんじゃよ。友達に恋人と行く予定って話しているのを。」
 「・・・・・・・・。」
 恭子は言葉が見つからなかった。


 「このツリーの下でキスしたら、永遠の愛が約束されるって言われとるんじゃろ? じゃから来た。・・・お前さんと・・・恭子とずっと変わりない愛が続けられるように・・・。好きじゃ。」
 

 「ま、雅治・・・。本当に?」
 「恭子には嘘は言わん。ずっと好きじゃったんじゃ。」
 「・・・私も・・・好き・・・!」
 仁王はその言葉を聞くや、周囲にお構い無しに恭子を力一杯抱き締め、そしてキスをした。

 
 永遠の愛が約束された瞬間であった。


 その後、二人は付き合い出し、ずっと幸せな日々を過ごすのであった。

 聖夜に感謝をして―――――――――
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