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□バイオレンスルージュ
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注意!!いざやさんが病んでます。







どうしたの?そんな悲しい目をして。眩しいまでの気骨を孕んだ君の黒眼が気に入っているのに。困ったふりなんかしたって離してあげない。君は僕の命より大切な玩具。





:バイオレンスルージュ:





頬に当てられた指先は、確かに体温が通っていて、すぐ目の前にある喜々とした昂揚を秘めた二つの目がそれを裏付けるにも関わらず、その冷たさに身震いがする。頬から顎にかけて添えられているだけなのに、実は凶暴な刃を隠しもっているのだ、と直感的に感じる。

ゆっくりと、丁寧に、冷たい指が唇をなぞる。異常だ。異常なまでの執着に、ぞっと背筋が凍る。

目の前の男は、見事なまでに整った顔立ちをしており、そしてその寸分の歪みもない綺麗に対照的な口元を、ふ、と緩め、けれど一層真剣なまなざしで、細い、真新しい口紅を私の口元に掠める。


「そんなに固く結んでいたら塗れないよ」


眉をひそめ、きつく閉じられた唇を開くよう促される。されるがままになんてなってやるつもりは微塵もない。はずだった。のに。抗う術が見当たらない。見つけられない。別に手足を拘束されているわけでもないのに、目の前の男は有無を言わさない。


「臨也さ」


ん、やめて、と続けようとしたが、口を開いた瞬間に、口の中に何かが入ってきた。指だ。男の指が2本、差し入れられて、それ以上は言葉とならなかった。


「大人しくしててよ。後でご褒美あげるから」


そういってゆっくりと抜かれた指を茫然と見つめる。ゆっくりと、緩やかなカーブを辿って引かれる紅。それは、脈々と体内を循環する血液なんかよりもよっぽど紅いんじゃないだろうか。

右端までなぞり終えると、目の前の男は、きっと縋るような目をしているであろう私の目をとらえ、


「ああやっぱり!君には紅がよく似合うなあ!」


と、この上なく満足そうに微笑んだ。



終。


100413
病んでるのはわたしか

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