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□大人の男
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「なんで俺なワケ?てめぇ、美形が売りなんだろ?じゃあ、てめぇでやりゃいーじゃん。」
「誰が美形を売りにしてんだよ!勝手なこと言うな。」
「読者の大半がそう思ってるし、自分でもわかってんだろォ?」
「んなコト、“そうだ”って、ナルみたく言えっか!言っただろ?俺は捜査の指揮を取るから、無理なんだよ!」
「大串くんがダメなら、他にも美形いるじゃん!総一郎くんとかさ。」
「総悟も指揮とんだよ!」
「オイ、マヨラ。ここにとびきりの美女がいるのに、なんでオカマに頼むネ!お前の眼は、星形の節穴かっ!」
「神楽ちゃん、何気にマヨネーズの口と、かけないでよ。てか潜入捜査だし、神楽ちゃんには危ないよ。」
「コラ、神楽。銀さんは女装はしても、オカマになった覚えはねーぞ!てか、新八、銀さんは危なくてもいーわけ?」
「いや、ガキじゃ意味ねーよ。」
「何言うか、マヨ!ガキとちがうネ。私の魅力がわかってないアルか。」
「なんにせよ、相手は近藤さんなんだ。歳、背格好からしてもてめぇが最適なんだよ、万事屋。お前、依頼なら何でもすんだろ?近藤さんの彼女(おんな)役くらい、簡単じゃねぇか?不本意だが、払いはたんまりしてやるからよ!」
「なんで、俺がゴリラの彼女なんだよ!あのいつかのゴリラ王女に頼みゃいいだろ!」
「できるかっ、んなこと!遊びじゃねぇんだ、闇ルート暴く大事なヤマなんだよ!」
しばらくして土方は紫煙を吐いた。
「わぁったよ、もういい。他をあたる。世話かけたな。」
土方は立ち上がると、出口に向かい歩き始めた。
「わぁったよ…。」
その声に土方は足を止め、新八と神楽は銀髪の男を見た。
「ほんとに大枚、出るんだろぅなぁ?」
土方は銀時を見、銀時はゆっくり顔を上げた。
「武士に二言はねぇ。」
神楽、新八は固唾を飲んで見守った。
「仕方ねぇ、やってやろうじゃん。」
銀時は頭を掻きながら、めんどくさげに応えた。
【大人の男】
「トシ…何もそこまでしなくても。」
「天人の薬物売買の闇ルートを暴ける絶好のチャンスなんだ。なんとしてもモノにしなけりゃ!それにアンタだって…。」
「そうですゼ、近藤さん。なんせ相手が営む合法カジノは野郎一人じゃ乗れないらしいですゼ。」
「え、そうなの?」
「恐らく、取引の保険だろ?少しでもあやしい動きがあれば、女を人質にでもする魂胆だろ。空なら逃げられねぇし、ムチャはできねぇてワケさ。」
「そっか…。」
「ここ数ヶ月、わざわざアンタが変装してホストになってまでしてこぎつけたヤマじゃねぇか…今しかねぇよ、近藤さん。」
「でも、巻き込んだりしたら危なくないか、万事屋も?」
「いーんだよ、こりゃビジネスだ。アイツの腕なら問題ねぇだろ。そう簡単にゃくたばらねぇって。」
「まぁ、そうだといいんだが…。」
月の明かりが照らす座敷で、局長・近藤勲は苦笑いした。
近藤は指定の車に乗り、万事屋の前に車を付けた。
髪をたらし、メガネをかけたホスト風な風貌のスーツに身を包んだ近藤が車を降りる。
停車の音を聞きつけて、引き戸が開くと、ツインテールに派手めのワンピースを着た女が階段を降りてくる。
銀時も近藤も互いを見て眼を丸くした。
しかし近藤は一呼吸おいて微笑むと、
「ワリィな、面倒に巻き込んで。」
と声をかけた。
「イヤ、別に。これも仕事だからよ。」
「てか、よく洋装できたな、銀時…。」
「銀時じゃねぇ、パー子だ。苦労したんだゼ、いろいろ詰め物してよォ。」
「ははは…世話かけたな。しかしパー子ってのはあんまりだろ。銀さんで行くか。」
「それじゃ、いつもとおんなじじゃねぇか!」
「でも俺はお前を銀さんとは呼ばねーし、基本女性には“さん”付けだからよ、俺。別に銀子さんだったら銀さんでもおかしかねぇだろ?」
「まぁ、そりゃ…。」
「じゃ、それで頼むわ。銀さん。」
「おぉ。」
柄にもなく、銀時は照れた。
近藤は強引に銀時の腕を取る。
「い゙でででで…。なにすんだよ、バカゴリラ!女の扱い方がまるでなってねぇよ!」
「あはは、ごめん。いや、ちょっとな…。」
「だからてめえはモテねーんだよ!」
腕をめくり、赤痣のついた二の腕を摩りながら銀時は言い放った。
「そうだな。」
近藤は薄く微笑んだ。