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□感謝の独り言
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「かわいい定春に何かあったらどうするネ、銀ちゃん!」

「だいじょーぶだろ?どちらかと言うと、定春になんかしよーとする奴の方が危うくなるんじゃねーか?」

「ここんとこ毎月、いなくなる日がアルネ。その日に限って帰りも遅いアル。」

「遅くても帰ってきてんだろ?じゃあ問題ねーじゃん。」

「銀ちゃん!銀ちゃんは定春が心配じゃないアルか!?」

「心配する対象を間違えてるよ、神楽ちゃん?」

「ヒドいネ、銀ちゃん本当は定春がかわいくないアルね!?」

「そうは言ってねぇけど…普通から考えてよォ、アイツが…。」

「神楽ちゃん、もう止めときなさい。」
「あ、姉御ォ?」

新八の忘れ物を届けようとして、万事屋に来た妙は神楽と銀時の問答が耳に入り、思わずそう声をかけた。

「そんな死んだ魚の眼をした、万年金欠銀髪天然パーマ侍なんかあてにしちゃダメよ。」
「ちょっとォォ!黙って聞いてりゃ、途中から乱入したワリに人の気にしてることばっか言ってくれんじゃないのォォ!」
「私も手伝うから、一緒に捜しましょ。」
「無視かよ、オイィィィ!」
「ありがとー、さすがは姉御ネ。頼りになるアル。」
「更にスルーかよォォ、オイ!」

横から必死にツッコミを入れる銀髪侍を置いて、妙は神楽と万事屋を出た。






【感謝の独り言】




「定春くーん?」

「さーだーはーるー?」


「居ないわね。」
「全くドコ行ったネ。」

かぶき町や白犬の行きそうな所をくまなく捜したが見つからない。

「じゃあ、私はあっち見てくるわ。」
「じゃあ私はこっち行くネ。」

やむなく妙たちは二手に分かれた。



しばらく見て回ると、道のハズレに墓地があり、不意に白い物が眼に入る。
もしや?と思い、覗きこむとお目当ての白犬がいた。

あ、さだは…。


……!?


白犬は1人ではなく、こともあろうに幕府の大型犬と一緒だった。


大型犬…いや、大型ゴリラ?
ゴリラに大型はないかしら?



隊服の上着を脱ぎ、Yシャツの袖を捲って、汗と埃だらけになっている。

どうやらお墓の草取りをしているらしい。



「定春くん、早く戻んないとチャイナさん、心配するよ?」

白犬は一吠えして、尾を振り、傍らの花束をくわえる。

「まだ手伝ってくれるのか?ありがと。じゃあ…いつものイチゴ牛乳でいいか?」

人の善い笑顔を、白犬は一舐めした。

「ははは…くすぐったいって。」

さすがは獣同士。
何か通ずるものがあるらしい…。


ひとしきり犬とゴリラはじゃれあって、お墓の掃除を再開した。


近藤は1つ1つお墓の周囲を綺麗にし、定春は背に乗せた花束を一束ずつ近藤に渡していく。

明らかに2人は連携がとれていた。

毎月いなくなる定春の理由は、おそらくこれであろう…。
妙はそう感じた。


「あと、少しだ。」
「ワン!」



黙々と草をとり、軽く墓石を磨いて、筒を掃除すると定春から受け取った花をいける。

その横顔は憂いを帯びていた。



「コイツらのおかげで俺も世の人もこうして生きていられる……でも…本当にこれでいいんだろうか…。」

白犬は尾の振りを止めた。


そういえば先日、真選組内でクーデターがあり、近藤自身も命を狙われたとかなんとか、新八が言っていたのを思い出した。



どうりで最近、店にこなかったハズだわ。
おおかた残務処理に奔走し、落ち着いた次は供養ってワケかしら?



随分な犠牲者が出たとも聞いた。


犬と共に作業に勤しむ男の背中は、いつもより小さく淋しげに見えた。



「墓標が増える度に自分のしてきたことが正しいことなのか……いつも悩むよ。」


墓石を眺めながら、近藤は白犬を撫でた。
目の前の墓石に「伊東」の文字が見える。
近藤の身体が小刻みに揺れ、砂利に水滴の染みができた。




近藤さん…。



彼に対する重圧は、計り知れない。それを彼は人知れず物言わぬ石に向かって吐いていた。



「せめて…俺が皆にしてやれることはこんくらいだな。」


彼は眼を拭い、鼻をすすると作業をまた再開した。
白犬はその声に一吠えして、作業に参加する。


私は2人に歩み寄った。
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