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□吾輩は虎鉄である。
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あ゙ー、アタマいてぇ。
昨日飲みすぎたかなぁ。
ガンガンするぅ。
まいったなぁ…仕事できんのかなぁ、またトシにドヤされるよ、こりゃ。
あ、総悟と“叩いてかぶって”やる約束もしてたなぁ…今日叩かれたら、脳ミソでるな、絶対…。
はぁ、お妙さんにも逢いそびれた。
もう昼か?
太陽があんなに高く……?


あれ?屯所じゃ…ないな。
なんで俺、外にいるんだ?
そだよ、誰も起こしにこないなんておかしいよな?

にしてもホント、頭ズキズキす…


イテッ…。


ん!?なんだ?ここ切れてる…。
血は止まってるみたいだな。


痛みの伴った場所から手をおろすと、ふと手が視界に入った。

ここで、1つの疑問が湧く。


俺の手である予定のものに肉球がついていること。


なんじゃこりゃぁぁぁ!!!


【吾輩は虎鉄である。】



おいィィィ、なんだよこれ!
これ、こないだよく見たヤツだよ。
そう、猫。猫の肉球!


……猫?


俺は飛び起きて、身体を見渡す。
後ろでフワフワと黒い尻尾が揺れていた。




この展開だと、俺がなるのはゴリラだろ?
なんで今日に限って猫なんだ!?




とりあえず冷静にここまでの流れを整理することにした。
さすがだぜ、俺。
前回の経験が活きてるなぁ。




痛みのあまり、記憶が一時的に曖昧になったが、今朝早く、勤務後のお妙さんをボディーガードしようと朝稽古を終えて屯所を出発した。
以前、銀時や桂と共に巻き込まれたこの近くを通り、懐かしさに吸い寄せられ、足を踏み入れた。
そしたら……そう、偶然、攘夷志士たちの集まりに出くわし、刀を交える事態となった。
その際、後部から殴られ、手負いのまま林を走り、倒れ込んだ。
そっからどうなったのかは、わかんねぇ……。



今、生きてることから想定して、その時に猫になって追撃をかわし、命拾いできた、てことか?

何にせよ、前は銀時や桂がいたが、今日は1人だし、身体中負傷して正直しんどいよ。
ホウイチ殿、いねーかなぁ。

俺は動きにくい身体に渇を入れながら、4本の足でトツトツと歩き出した。





少し歩くと、荒れた武家屋敷が見えた。
とりあえず、ここで休むかぁ。



「ポチー、ポチ。どこじゃ?隠れずともよい、出てまいれ。」
「皇子、アイツはヤバいですって。」
「何を言う。あれでなかなかうい奴なんじゃぞ。せっかく見つけた珍種じゃ、余はなんとしても連れて帰る!」

あ、どっかの星のバカ皇子だ。
まだゲテモノ集めしてんのかよ?

「おぉ、ポチ…なんじゃ猫か。大きな猫じゃのう、珍種か?」
「このくらいの猫はいますよ、皇子。」
「にしても、えらく汚い猫じゃのう。」

なめんな、バカ皇子。こりゃ名誉の負傷だっつうの!!


「まぁ、よい。早くポチを探さねば。」

永遠に探してろ、バーカ。

皇子とその側近は、草むらに姿を消した。
はぁ、さて。どっか静かに休めるところ、と…。



「キャー!」


あれ?どっかで聞き覚えのある声?
俺の耳がピクリと動く。
そして悲鳴のする方へ駆け出した。
身体は悲鳴をあげている。
しかし、それ以上に胸騒ぎがしたのだ。



走っていくと、草むらがあり俺はヒラリと飛び越える。
飛び越えた先に、見覚えのあるポニーが視界に入った。




お妙さん!?



目の前には、天使とヤクザがチークダンス踊ってるような、えげつない化け物がいる。

コイツか?余が探しているうい奴は!?
ういなんて次元越えてるよ!
ちっとも、ういくねーよ!
こんなの天地が引っくり返ったって愛せねーよ!
アイツ、やっぱバカだよ!
俺の比じゃないくらいバカだよ!
眼がつぶらすぎて、見えてねーんじゃねーの!?

んなバカ皇子のペット論はいいや…とりあえずお妙さんを助けなきゃ!!





妙は逃げ場を失い、座りこんでいた。

そんな妙の前に少し大きめな傷だらけの黒い猫が現れ、うい奴と妙の間に立ちはだかった。


猫は何十倍もあろう生き物に威嚇を始める。



何、この猫?どこから?


「猫さん、止めなさい。あなたでは無理よ!やられちゃうわ、逃げなさい。」


猫は全く聞く耳を持たずといった様子で威嚇を続けた。
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